エレキベースには「種類が多くてよくわからない」と感じる方が多いのではないでしょうか。プレシジョン、ジャズ、ミュージックマン、PJ、5弦、アクティブ、パッシブ。並べていくとキリがありません。
先に答えを置きます。エレキベースの種類はピックアップの構成でほぼ決まります。スプリットコイル1基=プレシジョンベース(PB)、シングルコイル2基=ジャズベース(JB)、ハムバッカー1基+アクティブ回路=ミュージックマン(MM)。この3大スタイルが軸で、PJや5弦は派生として整理できます。
本記事では、Sound Picks編集部が録音現場で扱ってきた視点も交えながら、ピックアップ構造の違い・3スタイルの音の傾向と得意ジャンル・派生タイプ・そして音響メディアらしく「ライン録り(DI接続)」への影響まで順に解説します。
INDEX≡目次
- 1エレキベースの種類は「ピックアップ構成」で決まる
- ►音の素性を握っているのはピックアップ
- ►ボディ形状とネック幅は弾き心地と取り回しに効く
- ►3大スタイルと派生タイプの全体像
- 2ピックアップ構造の3パターン|スプリットコイル・シングルコイル・ハムバッカー
- ►スプリットコイル(PB型):1基を2分割してハムを打ち消す
- ►シングルコイル×2(JB型):2基を離して配置し多彩な音を作る
- ►ハムバッカー(MM型):2コイル並列+アクティブ回路で太く明瞭
- 3プレシジョンベース(PB)|太く前に出る音の代表格
- ►1951年誕生、1957年にスプリットコイル化されたヒストリー
- ►音の傾向:中低域に厚み、抜けと押し出しの強さ
- ►得意なジャンル:ロック・パンク・カントリー・スタジオ録音の定番
- 4ジャズベース(JB)|2つのシングルコイルで作る多彩な音
- ►1960年誕生、2ピックアップ・ボリューム×2構成
- ►音の傾向:ワイドレンジ・抜けの良い高音域・ミドル削れ
- ►得意なジャンル:ジャズ・フュージョン・ファンク・幅広く対応
- 5MM(ミュージックマン)タイプ|ハムバッカー+アクティブの現代的サウンド
- ►1976年StingRay誕生、量産機初のオンボード・アクティブEQ
- ►音の傾向:低域の重さと高域のスナップを両立、ミドル抜け
- ►得意なジャンル:ファンク・モダンロック・ポップス
- 6PJ・5弦・アクティブ/パッシブ|派生タイプと選び方の軸
- ►PJタイプ:フロントPB+リアJで「いいとこ取り」
- ►5弦・6弦:LowB弦が要るジャンルでの選択肢
- ►アクティブとパッシブ、それぞれの素性
- ►メーカー横並びで見る代表機
- 7種類の違いが録り音を変える|DI接続とライン録りの判断軸
- ►出力レベル:パッシブPBとアクティブMMでDIの選び方が変わる
- ►アクティブDIとパッシブDIの使い分け
- ►編集部メモ:JBをライン録りした時のレベル設定の話
- 8まとめ:3大スタイルの素性を知れば最初の1本が選べる
- 9よくある質問(FAQ)
エレキベースの種類は「ピックアップ構成」で決まる
エレキベースの種類を分けているのは、第一にピックアップの構成です。ボディ形状やネック幅、スケール長は弾き心地と取り回しに効きますが、出てくる音の素性そのものを握っているのはピックアップです。同じボディ形状でもピックアップを載せ替えれば音は別物になります。逆もまた然りで、ボディが違っても同じピックアップ構成なら音の系統は近づきます。
音の素性を握っているのはピックアップ
ピックアップとは、弦の振動を磁界の変化として捉え、電気信号に変える発電装置のことです。ベースの場合、ここで拾われた信号がアンプやライン録りの機材へ送られるため、音の太さ・抜け・ノイズ量はまずピックアップで決まります。エレキベースそのものの概論はエレキベースとはで扱っています。
ボディ形状とネック幅は弾き心地と取り回しに効く
ボディの材や厚み、ネックの幅(ナット幅)やスケール長は、弾き心地・取り回し・サスティン(音の伸び)に影響します。プレシジョンのネックは太め、ジャズはやや細く絞られているのが定番です。長時間のステージでは、この差が疲労感に直結します。ただし「音の系統」を決めるのは、あくまでもピックアップ側です。
3大スタイルと派生タイプの全体像
軸となるのは3大スタイルです。プレシジョン(PB/Precision Bass)、ジャズ(JB/Jazz Bass)、ミュージックマン(MM/Music Man)。そして派生として、PB前+JB後ろのPJタイプ、LowB弦を加えた5弦・6弦、内蔵プリアンプを持つアクティブ仕様などが並びます。並行記事のエレキギターの種類と同じく、ベースも「ピックアップで音、ボディで弾き心地」と捉えると整理しやすくなります。
ピックアップ構造の3パターン|スプリットコイル・シングルコイル・ハムバッカー
3大スタイルの違いは、突き詰めるとピックアップのコイル構造とその接続に行き着きます。スプリットコイル・シングルコイル2基・ハムバッカーの3つを押さえれば、PB/JB/MMの音の傾向が物理的に説明できます。
スプリットコイル(PB型):1基を2分割してハムを打ち消す
スプリットコイルは、見た目には1基のピックアップですが、内部では2つのコイルに分割されています。低音弦側と高音弦側の2ブロックを逆巻き・逆磁極で接続することで、外来のハムノイズ(電源由来のノイズ)を打ち消す動作になります。これは1957年にFenderがプレシジョンベースに導入した方式で、見かけが1基でも実質はハムバッキング動作です(Wikipedia|Fender Precision Bass)。
シングルコイル×2(JB型):2基を離して配置し多彩な音を作る
ジャズベース型は、1基のシングルコイルをフロント(ネック寄り)とリア(ブリッジ寄り)に距離を取って配置します。1960年の初期モデルでは2基の間隔は約3.6インチ(91mm)、後期では約4インチ(100mm)に変更されました(Sweetwater|A Short History of the Fender Jazz Bass)。両方のピックアップをONにすると、ハムが打ち消されるよう設計されているのが定番です。
ハムバッカー(MM型):2コイル並列+アクティブ回路で太く明瞭
ハムバッカーは、2基のコイルを逆巻き・逆磁極で組み合わせて1つにまとめた構造で、出力が大きくノイズに強いのが基本特性です。ミュージックマン StingRayのハムバッカーは、多くのハムバッカーと違い並列接続で組まれており、これがHi-Fiな明瞭さと太さの両立に効いているとされます(Seymour Duncan|The History of the Music Man StingRay Bass Pickup)。MMタイプは、このハムバッカーに9V電池駆動のオンボード・アクティブEQを組み合わせた構成が定型です。
プレシジョンベース(PB)|太く前に出る音の代表格

プレシジョンベース(Precision Bass)は、エレキベースの祖と言える存在です。スプリットコイル1基というシンプルな構成から、中低域に重心を置いた太く前に出る音が出ます。バンドアンサンブルの「ローエンドの定番」として、スタジオでもステージでも信頼されてきた素性です。
1951年誕生、1957年にスプリットコイル化されたヒストリー
Leo Fenderがプレシジョンベースを発表したのは1951年。当初は単一のシングルコイル・ピックアップでしたが、ハムノイズの問題と立ち上がりの強いアタックがスピーカーを傷めやすい点が課題でした。1957年にスプリットコイルへ変更され、AlnicoV磁石と組み合わせて現代まで続く形になります(Wikipedia|Fender Precision Bass、Fender公式|The History of the Fender Precision Bass)。
音の傾向:中低域に厚み、抜けと押し出しの強さ
スプリットコイルが生む音は、中低域に芯と厚みがあり、アタックが滑らかでまとまる傾向です。「太く前に出る」「バンドに馴染んでローを支える」と評されるのはこのためです。EQで細かく整える前から、すでにベースとして使える音が出ます。
得意なジャンル:ロック・パンク・カントリー・スタジオ録音の定番
ジャンルとの相性で言えば、ロック、パンク、カントリー、ブルース、そしてレコーディングで「とりあえずローを支える音」が必要な現場全般に向きます。ピックで弾いてもフィンガーで弾いても、音の輪郭がぼやけにくいのが現場で重宝される理由です。
ジャズベース(JB)|2つのシングルコイルで作る多彩な音
ジャズベース(Jazz Bass)は、1960年に登場した「2ピックアップ」構成のエレキベースです。フロントとリアそれぞれにシングルコイルを持ち、ボリュームを2基独立で動かせることで、音色の幅が広がります。
1960年誕生、2ピックアップ・ボリューム×2構成
初期モデル(1960年)はコンセントリック・ノブ(同軸の2段ノブ)で、各ピックアップにVolume/Tone独立という設計でしたが、1961年からは現在の「Volume・Volume・Tone」配列に変更されました(Sweetwater|A Short History of the Fender Jazz Bass)。ネックはプレシジョンよりやや細く絞られ、握りやすいのが定番です。
音の傾向:ワイドレンジ・抜けの良い高音域・ミドル削れ
シングルコイル2基の音は、プレシジョンに比べてワイドレンジで高音域の抜けがよく、輪郭がはっきりしています。両方のピックアップをONにするとミドル(中域)がやや凹む音色になり、スラップやファンクのキレに向く素性です。フロント単独なら太め、リア単独なら鼻にかかったブライトな音、両ONでスコープド気味と、1本で3つの音色が出せるのが強みです。
得意なジャンル:ジャズ・フュージョン・ファンク・幅広く対応
ジャンルとの相性で言えば、ジャズ・フュージョン・ファンク・ポップス・R&Bと幅広く対応します。1本目でジャンルを絞り切れない方が選ぶと、つぶしが利く選択肢に入ります。ロックでも問題なく使え、現場で「困らない汎用機」として支持されています。
MM(ミュージックマン)タイプ|ハムバッカー+アクティブの現代的サウンド
- 構造:スプリットコイル1基
- 電源:不要(パッシブ)
- 音:中低域に厚み・太い
- 得意:ロック/パンク/録音定番
- 構造:シングルコイル2基
- 電源:不要(パッシブ)
- 音:ワイドレンジ/ミドル削れ
- 得意:ジャズ/ファンク/汎用
- 構造:ハムバッカー1基(並列)
- 電源:9V電池(アクティブEQ)
- 音:Hi-Fi×太さ/ミドル抜け
- 得意:ファンク/モダンロック
ミュージックマン(Music Man)タイプは、1976年に登場したMusic Man StingRayを原点とするスタイルです。リアにハムバッカー1基を載せ、9V電池駆動のオンボード・アクティブEQを組み合わせた構成が定型で、現代的なベースサウンドの基準を作った1本と言えます。
1976年StingRay誕生、量産機初のオンボード・アクティブEQ
StingRayは、量産4弦ベースとして初めてオンボード・アクティブ・イコライザーを搭載したモデルです(Wikipedia|Music Man StingRay、Ernie Ball Music Man公式|StingRay Special)。初期は2バンドEQ(Bass/Treble)、後にミッドレンジを加えた3バンドEQが定番化しました。
音の傾向:低域の重さと高域のスナップを両立、ミドル抜け
StingRayのハムバッカーは、他社の多くのハムバッカーが直列接続なのに対し並列接続で組まれています。低出力のコイルを並列で使い、強力な磁石でローを稼ぐという設計のため、Hi-Fiな明瞭さと太い低域、そしてスナップのある高域を両立する音になります(Seymour Duncan|The History of the Music Man StingRay Bass Pickup)。ミドルが抜けたスコープド気味のキャラクターが、ファンクのスラップやモダンポップでよく映えます。
得意なジャンル:ファンク・モダンロック・ポップス
ジャンルとの相性で言えば、ファンク、モダンロック、ポップス、R&Bが王道です。アクティブEQで現場のPA環境に合わせて音を整えやすいのも、ライブで支持される理由の一つです。
PJ・5弦・アクティブ/パッシブ|派生タイプと選び方の軸
3大スタイルを軸に置けば、PJ・5弦・アクティブ/パッシブといった派生タイプも整理できます。それぞれが「どの軸の組み合わせか」を理解すると、選択肢の見通しがよくなります。
PJタイプ:フロントPB+リアJで「いいとこ取り」
PJタイプは、フロントにプレシジョン用スプリットコイル、リアにジャズ用シングルコイルを載せた構成です。フロント単独ならPBの太さ、両方ONならJBに近い抜けが加わるため、「PとJのいいとこ取り」を狙ったレイアウトと言えます。Fender PrecisionにはPJ仕様の派生も用意されています(Fender公式|Precision Bass)。
5弦・6弦:LowB弦が要るジャンルでの選択肢
5弦ベースは、4弦の上に低音弦のLowB弦(基音約31Hz)を追加した楽器です。メタル、モダンR&B、教会音楽、ゴスペルなど、E1(約41Hz)より低い音域が要るジャンルで選択肢に入ります。低い帯域の話はベースアンプとギターアンプの違いでも整理しています。
アクティブとパッシブ、それぞれの素性
パッシブ回路は、ピックアップの信号をVolumeとToneだけで処理する素直な構成です。タッチに敏感で、プレイのニュアンスが出やすいのが持ち味です。アクティブ回路は、9V電池駆動のオンボード・プリアンプとEQブースト機能を内蔵し、出力が大きく、長いケーブルでも信号劣化が起きにくい設計です(Sweetwater|Passive vs. Active Basses)。現場でEQを能動的に動かしたい方はアクティブ、素の音と運用のシンプルさを取りたい方はパッシブが向いています。
メーカー横並びで見る代表機
3大スタイルの代表機を、メーカー横並びで挙げておきます。プレシジョン系はFender Precision Bass、ジャズ系はFender Jazz Bassが原点です。ミュージックマン系はErnie Ball Music Man StingRay/StingRay Specialが定番です。これらに加え、Yamaha BBシリーズ(PJ系の堅実機)、Ibanez SRシリーズ(薄く軽いボディとモダンなアクティブ回路)、Sadowsky(JB系をハイエンドに仕立てた工房ブランド)なども現場でよく使われます。同じ系統内でも仕様差は大きいため、最終的な選定はメーカー公式仕様と試奏で確認するのが無難です。
種類の違いが録り音を変える|DI接続とライン録りの判断軸
MM(アクティブ)
アクティブ→Passive DI可
低インピーダンス
ヘッドルーム確保
ここからが音響メディアの本題です。エレキベースの種類は、ライブPAだけでなくライン録り(DI接続)でも実際の判断を変えます。「DIのアクティブ/パッシブをどちらにするか」「ゲインをどこに合わせるか」が、種類によって変わってきます。
出力レベル:パッシブPBとアクティブMMでDIの選び方が変わる
DI(Direct Injection、ダイレクトボックス)とは、楽器の信号をマイクケーブル(XLR・低インピーダンス)で送れる形式に変換する小型機材のことです。詳しくはDIとはで扱っています。ここで効いてくるのが、楽器側の出力レベルとインピーダンスです。パッシブのプレシジョンやジャズはハイインピーダンス・中〜低出力で、長いケーブルを引き回すと高域が落ちやすい。アクティブのStingRayは内蔵プリアンプで低インピーダンス化されており、出力も大きく、長いケーブルでも劣化が起きにくいのが基本特性です。
アクティブDIとパッシブDIの使い分け
パッシブのベースにはアクティブDI(電源駆動の入力バッファ付き)を使うと、出力を稼ぎながら音をしっかり押し出せます。アクティブのベースにはパッシブDIでも十分対応できますが、入力過大で歪まないようパッドスイッチ(-20dB等)の有無を確認しておくのが無難です(Sweetwater|Passive vs. Active DI Boxes)。ライン録りの入口にあたるオーディオインターフェース側のゲインも、種類に合わせて余裕を見ておくと安定します。
編集部メモ:JBをライン録りした時のレベル設定の話
編集部がジャズベース(パッシブ)をライン録りした際、フロント単独・リア単独・両PU ONでピークレベルが目に見えて違うことを実感しました。両PU ONで合わせたゲインのまま、フロント単独に切り替えると数dB持ち上がる場面があり、テイクごとにゲインを微調整する運用に切り替えています。種類だけでなく「ピックアップのバランス位置」も録り音の入力レベルを動かすという、現場ならではの気づきでした。ゲインの基本はゲインステージングでも整理しています。
まとめ:3大スタイルの素性を知れば最初の1本が選べる
エレキベースの種類は、ピックアップの構成で決まります。プレシジョン(スプリットコイル1基)は太く前に出る音、ジャズ(シングルコイル2基)はワイドレンジで多彩、ミュージックマン(ハムバッカー1基+アクティブ)はHi-Fiでスナップのあるモダンサウンド。この3軸を押さえれば、PJや5弦、アクティブ/パッシブといった派生も「どの軸の組み合わせか」で理解できます。
- 構造:PBはスプリット1基(実はハムバッキング動作)、JBはシングル2基、MMはハムバッカー1基+アクティブEQ
- 音:PBは中低域に厚み、JBはワイドレンジでミドル削れ、MMはHi-Fi×太さでミドル抜け
- 録り音:パッシブPBはアクティブDIと相性、アクティブMMはパッシブDIでも対応可、ゲインは種類で動かす
自分のベースがどんな信号を出す楽器なのかを把握しておくことが、安定した音作りとライン録りの起点になります。価格は変動するため、各販売店の公式情報でご確認ください。エレキベースの基本はエレキベースとは、ベースアンプとギターアンプの違いはベースアンプとギターアンプの違い、ライン録りの前提はDIとはも合わせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1 プレシジョンとジャズ、最初の1本にはどちらが向きますか?
A. 音の好みとジャンル次第です。ロックやパンクで「太いローを支える音」が欲しいならプレシジョン、ジャンル横断で多彩な音を作りたいならジャズが向いています。ネックはプレシジョンが太め、ジャズがやや細めなので、試奏で握り心地も確認するのが無難です。
Q2 PJタイプはPとJの中間の音になりますか?
A. 完全な中間というより「両方の素性を切り替えて使える」と捉えるのが実情です。フロント単独でプレシジョン寄りの太さ、両方ONでジャズに近い抜けが加わります。1本で2系統の音を出したい方に向く選択肢です。
Q3 アクティブベースは電池が切れたら音が出ませんか?
A. 多くのモデルは電池が切れると音が極端に小さくなる、あるいは出なくなる仕様です。アクティブ回路は9V電池で内蔵プリアンプを動かす設計のため、ライブ前に電池の予備を用意しておくのが無難です。一部、アクティブ/パッシブを切り替えられる機種もあります。