DI(ダイレクトボックス)とは|役割とアクティブ/パッシブの選び方

2026.06.03
DI・エフェクター

DIとは、楽器の高インピーダンスな信号を、マイクケーブルで送れる低インピーダンスのバランス信号へ変換する小型機材のことです。正式名称はDirect Injection(ダイレクト・インジェクション)です。

DIのアクティブとパッシブで迷っていませんか。結論から言えば、出力の低いパッシブピックアップのベースやピエゾのアコギにはアクティブDIが無難で、出力の高いアクティブピックアップのベースやシンセサイザーならパッシブDIでも対応できます。

本記事では、Sound Picks編集部が現場で得た判断軸をもとに、DIの役割と信号の流れ、アクティブ/パッシブの違い、楽器別の選び分け、定番機の公式仕様の横並び、そして実際の使い方までを順に整理します。

INDEX目次

DI(ダイレクトボックス)とは|定義と信号の流れ

DI(ダイレクトボックス)とは、楽器の高インピーダンス信号を、マイクケーブルで長距離・低ノイズに送れる低インピーダンスのバランス信号へ変換する小型機材です。「ダイレクトインジェクションボックス」を略してDIと呼びます。ベースやアコースティックギター、シンセサイザーをPA卓やオーディオインターフェースへ送るときの橋渡し役と言えます。

図:DIの信号の流れ(楽器 → DI → XLR → PA卓/オーディオインターフェース)
楽器
Hi-Z/アンバランス
ベース・アコギ・シンセ
DI
インピーダンス変換
+バランス化
スルー出力→アンプ
XLR
低Z/バランス
マイクケーブルで長距離
PA卓/I/F
マイク入力で受ける
DIを境に、Hi-Zのアンバランス信号が低インピーダンスのバランス信号へ変換され、長距離でも低ノイズで卓へ届きます。

DIの1文定義(Direct Injection)

DIは、楽器側の信号を受け、XLR出力からマイクケーブルでミキサーのマイク入力へ送る形に変換します。多くのDIには楽器アンプへ分岐するスルー(パラレル)出力も備わります。

信号の流れ:楽器→DI→XLR→PA卓/オーディオインターフェース

信号は「楽器(Hi-Z)→DI→XLR(低インピーダンスのバランス)→PA卓またはオーディオインターフェース」という流れで進みます。DIを境にHi-Zのアンバランス信号が、低インピーダンスのバランス信号へと姿を変えるイメージです。

Hi-Z(ハイインピーダンス)とは

Hi-Z(ハイインピーダンス)とは、電気抵抗が高く信号が弱い状態のことです。エレキベースやエレキギター、ピエゾピックアップのアコギの出力はHi-Zで、そのまま長いケーブルで送ると高域が痩せやすく、ノイズも乗りやすくなります。

なぜDIが必要か|Hi-Z楽器をXLRバランスで長距離・低ノイズに送る

DIが必要な理由は、Hi-Zの楽器信号をそのまま長距離で送ると高域が劣化し、ノイズが混入しやすいためです。DIで低インピーダンスのバランス信号へ変換すると、PA卓まで何十メートル引き回しても音質を保ちやすくなります。これがDIの中心的な役割です。

図:DIが信号を変換する仕組み(Hi-Z・アンバランス→低Z・バランス)
楽器
高インピーダンス
アンバランス
短いシールドで接続
DI
インピーダンス変換
+バランス化
ここが境目
マイクケーブル
低インピーダンス
バランス(XLR)
長距離でも低ノイズ
ミキサー
マイク入力で受ける
PA卓/I/F
パッシブDI:トランスで変換し電源不要。シンプルで音が太く、出力の大きい機材向き。
アクティブDI:電源(電池/ファンタム)で駆動。微小な出力の楽器でも余裕を持って受けられる。
DIを境に、高インピーダンスのアンバランス信号が低インピーダンスのバランス信号へ変換され、マイクケーブルで長距離でも低ノイズに送れる。

アンバランスのHi-Z信号が長距離で弱い理由

楽器のシールドケーブルはアンバランス(信号線1本+シールド)で、Hi-Zのため外来ノイズを拾いやすい構造です。ケーブルが長くなるほど静電容量の影響で高域が減衰し、音がこもりがちになります。

バランス転送とインピーダンス変換で何が変わるか

バランス転送とは、2本の信号線に逆相で同じ信号を送り、受け側で差分を取る方式です。両線に等しく乗ったノイズは差分で打ち消され、長距離でも静かに届きます。DIはこのバランス信号への変換と、Hi-Zから低インピーダンスへのインピーダンス変換を同時に担います。

編集部メモ:DIなしでベースを送って起きたこと

編集部が小規模なライブで、ベースをDIを介さずHi-Zのまま長尺のケーブルで卓へ送ろうとした際、高域が痩せて輪郭がぼやけ、薄いハムも乗りました。間にDIを1台挟むだけで芯が戻り、ノイズも収まっています。長距離送りでのDIの効果が分かりやすく出た場面です。

アクティブDIとパッシブDIの違いと選び分け

DIにはパッシブとアクティブの2方式があります。パッシブDIはトランスで変換する電源不要のタイプで、音に癖が少ないのが持ち味です。アクティブDIは電源(ファンタムまたは電池)で動くバッファ回路を内蔵し、入力インピーダンスを高く保てるため、出力の低い楽器に強いのが特長です。

図:パッシブDI / アクティブDI 早見比較
パッシブDI(トランス式)
電源不要・ハムに強い・音の癖が少ない。
極端に出力の低い信号は受け切れない場面も。
向く楽器:アクティブPUベース/シンセ・キーボード/出力の高い楽器
アクティブDI(電源駆動)
ファンタム/電池で動作・入力インピーダンスを高く保てる。
電源が来ないと動かないモデルも。
向く楽器:パッシブPUベース/ピエゾのアコギ/出力の低い楽器
迷ったら:パッシブPUベース・ピエゾのアコギはアクティブが無難。アクティブPUベース・シンセはパッシブでも対応可。ライブはアクティブを基準に揃える運用が定番。

パッシブDI(トランス式・電源不要)の特性

パッシブDIとは、トランス(変成器)で信号を変換する電源不要のDIです。電源トラブルの心配がなく、ハムにも強く、信号の色付けが少ないのが利点です。一方、極端に出力の低い楽器や高インピーダンスの信号では、トランスが受け切れず低域や出力に余裕が出にくい場面もあります。シンセや出力の高い楽器との相性が良い方式です。

アクティブDI(電源駆動・バッファ内蔵)の特性

アクティブDIとは、ファンタム電源(Phantom Power、+48V DC)または電池で駆動するバッファ/プリアンプを内蔵したDIです。入力インピーダンスを高く保てるため、パッシブピックアップのベースやピエゾのアコギなど、出力の低い楽器でも信号が痩せにくいのが利点です。電源が要る点が弱点で、ファンタムが来ないと動かないモデルもあります。

どちらを選ぶか|判断の早見

迷ったときの軸はシンプルです。出力の低いパッシブピックアップのベースやピエゾのアコギはアクティブが無難で、出力の高いアクティブピックアップのベースやシンセはパッシブでも対応できます。ライブの現場ではアクティブDIを基準に揃える運用が定番です。

楽器別の向き|ベース・アコギ・シンセ/キーボード

楽器ごとに向くDIの方式は変わります。出力の低いパッシブピックアップのベースとピエゾのアコギはアクティブDIが向き、ライン出力で出力の高いシンセ/キーボードはパッシブDIでも扱いやすい、というのが基本軸です。楽器の出力レベルとインピーダンスで判断します。

ベース:パッシブピックアップとアクティブピックアップで変わる

パッシブピックアップのベースは出力が低めで、入力インピーダンスを高く保てるアクティブDIが向いています。電池やプリアンプを内蔵したアクティブピックアップのベースは出力が高く、パッシブDIでも十分に扱えます。ベース用のプリアンプ機能付きDI(プリアンプDI)を併用する選択肢もありますが、音作りまで担う機材のため用途で選び分けます。

アコギ:ピエゾはHi-Z、プリアンプ/DIの位置づけ

アコースティックギターのピエゾピックアップはハイインピーダンスで、専用プリアンプかアクティブDIでインピーダンス変換するのが基本です。PA卓がすぐ近くにある小規模な現場では省略できる場合もありますが、卓が離れるホールやライブハウスでは、音質を保つために入れる場面が多いのが実情です。

シンセ/キーボード:ライン出力とステレオの扱い

シンセサイザーやキーボードはライン出力で出力レベルが高く、パッシブDIでも安定して扱えます。ステレオで送るなら2ch入力のステレオDIが便利です。複数台のキーボードをまとめる場合は、入力数と接続端子をあらかじめ確認します。

グランドリフトとPAD|現場のハム・レベル過大への対処

多くのDIにはグランドリフトとPADという2つのスイッチが付きます。グランドリフトはグランドループによるハムを断つための機能で、PADは過大入力を受けるための減衰機能です。現場のトラブル対処に直結するため、役割を押さえておくと安定します。

グランドリフトでグランドループのハムを断つ

グランドリフトとは、筐体やケーブルのグラウンド接続を切り離す機能です。ステージ側の電源とPA側の電源で電位差が生じると、グランドループという経路でハム(ブーンという低い雑音)が回り込みます。グランドリフトでこの経路を断つと、ハムが収まることがあります。

PAD(アッテネーター)で過大入力を受ける

PADとは、入力信号を減衰させるアッテネーターのことです。アンプのスピーカー出力やライン出力など、レベルの高い信号を受けるときに、PADで入力を下げて歪みを防ぎます。BSS AR-133のように0/-20/-40dBの3段で切り替えられる機種もあります。

編集部メモ:ステージでのハム退治の手順

編集部がステージでハムに悩まされた際は、まずDIのグランドリフトを切り替えて変化を確認しました。これで収まれば電源系のグランドループが原因で、収まらなければケーブルや電源タップ側を疑う、という順序で切り分けています。グランドリフトは現場で最初に試す対処の一つです。

定番DIの横並び比較(公式スペック)

定番DIは、アクティブ/パッシブの方式、入力インピーダンス、電源、グランドリフト/PADの有無で性格が分かれます。ここではメーカー横並びで、公式仕様をもとに代表機を整理します。価格は変動が大きいため、本記事では金額を断定しません。以下は2026年6月時点の参考であり、実勢価格は各販売店でご確認ください。

図:定番DIの横並び比較(公式仕様より・2026年6月時点)
機種(メーカー) 方式 入力インピーダンス 電源 グランドリフト PAD
Radial ProDI パッシブ 140kΩ 不要 あり
CLASSIC PRO CDI-1P パッシブ -(1/4″入力/XLR出力) 不要 あり
BOSS DI-1 アクティブ 4.7MΩ/37kΩ 9V電池/ファンタム24〜48V あり 入力レベル切替
Radial J48 アクティブ 220kΩ ファンタム48V あり -15dB
BSS AR-133 アクティブ 1MΩ(PAD 0dB時) ファンタム48〜20V/電池 あり 0/-20/-40dB
Countryman Type 85 アクティブ 10MΩ(ピックアップモード) ファンタム48〜24V/9V電池(自動切替) あり
BEHRINGER DI100 アクティブ 250kΩ以上 ファンタム18〜48V/9V電池(自動切替) あり あり
CLASSIC PRO CDI-1A アクティブ 1MΩ ファンタム/電池 あり あり
出典:各メーカー公式仕様(Radial Engineering/Roland・BOSS/BSS/Countryman/BEHRINGER/サウンドハウス CLASSIC PRO)。「-」は当該機能の公称記載なし、または非該当。価格は記載せず、実勢価格は各販売店でご確認ください。

パッシブの定番:Radial ProDI/CLASSIC PRO CDI-1P

Radial ProDIは、トランス式パッシブの定番で、入力インピーダンス140kΩを公称します。出力の高い楽器やシンセに向き、電源を必要としません。CLASSIC PRO CDI-1Pは、入手しやすい価格帯のパッシブDIで、アンバランス入力をXLRバランス出力へ変換します。

パッシブDIの定番をサウンドハウスで探す
Radial ProDI / CLASSIC PRO CDI-1P など、トランス式パッシブDIの在庫・価格は販売店でご確認ください。
サウンドハウスでパッシブDIを見る

アクティブの定番:BOSS DI-1/Radial J48/BSS AR-133/Countryman Type 85/BEHRINGER DI100/CLASSIC PRO CDI-1A

アクティブの代表機は性格がそれぞれ異なります。Radial J48はファンタム48V駆動で-15dBのPADと80Hz HPF(ハイパスフィルター)を備え、BSS AR-133はファンタム電圧の許容が広く0/-20/-40dBの3段PADが特徴です。Countryman Type 85は入力10MΩの高インピーダンスでピエゾとの相性が語られ、BOSS DI-1とBEHRINGER DI100は電池とファンタムの両対応で導入しやすい位置づけです。CLASSIC PRO CDI-1Aは入力1MΩの実用的なアクティブDIです。

アクティブDIの定番をサウンドハウスで探す
BOSS DI-1 / Radial J48 / BSS AR-133 / Countryman Type 85 / BEHRINGER DI100 / CLASSIC PRO CDI-1A など、アクティブDIの在庫・価格は販売店でご確認ください。
サウンドハウスでアクティブDIを見る

DIの使い方|接続手順とライブ/レコーディングでの扱い

DIの使い方は、楽器の出力をDIの入力(Hi-Z)へつなぎ、DIのXLR出力からマイクケーブルでPA卓やオーディオインターフェースへ送るのが基本です。アクティブDIなら卓側からファンタム電源を供給します。接続の順番を押さえれば、現場で迷う場面は減ります。

接続手順(楽器→DI→XLR→卓、スルー出力)

楽器のシールドをDIの入力に挿し、DIのXLR出力からマイクケーブルで卓へ送ります。多くのDIにはスルー(パラレル/リンク)出力があり、そこからステージの楽器アンプへ分岐できます。ステージ上で自分の音を出しつつ、卓にもクリーンな信号を送れる形です。

ライブでの扱い(ファンタム供給・パラアウト)

ライブではアクティブDIへ卓側からファンタム電源を供給します。複数のDIはステージボックス(スネーク)で集約し、ハウス卓へまとめて送ります。PAの仕組み全体は「PAとは」で整理しています。ミキサー側の扱いは「ミキサーの使い方」も参考にしてください。

レコーディングでの扱い(ライン録り・リアンプ)

レコーディングでは、DIでベースやギターをライン録りし、後から実機アンプへ送り直すリアンプという手法もあります。録音側のインターフェースの選び方は「オーディオインターフェースのおすすめ」で詳しく扱っています。Hi-Z入力を備えるインターフェースなら、近接の宅録ではDIを省略できる場合もあります。マイクケーブルの選び方は「XLRケーブルのおすすめ」も合わせてご確認ください。

よくある質問(FAQ)

Q. DIは無くてもいいですか?

A. PA卓がすぐ近くにある小規模な現場や、Hi-Z入力を備えたオーディオインターフェースへ短距離で送る宅録では、省略できる場合があります。卓が離れるライブハウスやホールで、長距離を低ノイズに送りたい場面では入れる価値が高いです。

Q. ベースはアクティブとパッシブどちらのDIがいいですか?

A. 出力の低いパッシブピックアップのベースはアクティブDIが無難です。電池やプリアンプを内蔵したアクティブピックアップのベースは出力が高いため、パッシブDIでも扱えます。ライブハウスではアクティブDIを基準に揃える運用が定番です。

Q. アコギにもDIは要りますか?

A. アコギのピエゾピックアップはハイインピーダンスのため、専用プリアンプかアクティブDIでインピーダンス変換するのが基本です。卓が近ければ省略できる場合もありますが、卓が離れる会場では音質維持のために入れる場面が多いのが実情です。

Q. PA卓の前段でDIを入れると何が起きますか?

A. Hi-Zのアンバランス信号が、低インピーダンスのバランス信号に変換されます。これにより長距離ケーブルでも高域が痩せにくく、外来ノイズも打ち消されやすくなり、卓のマイク入力にきれいに収まります。

Q. アクティブDIの電源はファンタムと電池どちらがいいですか?

A. 卓からファンタム電源が安定して供給できる現場ではファンタムが扱いやすく、配線も増えません。ファンタムが来ない卓や単体録音では電池が選択肢になります。BOSS DI-1やBEHRINGER DI100、Countryman Type 85は両対応で、自動切替の機種もあります。

Q. DIとプリアンプ(アンプシミュレーター)の違いは何ですか?

A. DIはインピーダンス変換とバランス化が主目的で、音色はできるだけ素直に通します。プリアンプやアンプシミュレーターは音作りまで担い、出力にバランス端子を備える機種はDI機能を兼ねることもあります。素の信号を送りたいならDI、音作りまで一台で完結させたいならプリアンプDIが向いています。

まとめ

DIとは、楽器のHi-Z信号を低インピーダンスのバランス信号へ変換し、長距離・低ノイズでPA卓やオーディオインターフェースへ送るための小型機材です。アクティブ/パッシブのどちらを選ぶか、楽器に何を合わせるか、現場のハムやレベル過大にどう対処するかが、選定と運用の勘所になります。

  • アクティブ/パッシブで見ると、パッシブはトランス式で電源不要・癖が少なく、アクティブは電源(ファンタム/電池)駆動で入力インピーダンスを高く保てる
  • 楽器別では、パッシブピックアップのベースとピエゾのアコギはアクティブが無難、アクティブピックアップのベースやシンセはパッシブでも対応できる
  • グランドリフトはグランドループのハム対策、PADは過大入力対策として現場で機能する
  • 定番機は方式・入力インピーダンス・電源・グランドリフト/PADで性格が分かれ、Radial ProDI/CLASSIC PRO CDI-1Pがパッシブ、BOSS DI-1/Radial J48/BSS AR-133/Countryman Type 85/BEHRINGER DI100/CLASSIC PRO CDI-1Aがアクティブの代表

価格は変動するため、各販売店でご確認ください。PAの基礎、ミキサーの使い方、XLRケーブルの選び方、オーディオインターフェースのおすすめはSound Picksの関連記事でも扱っています。DI選びと合わせてご確認ください。

関連リンク

関連記事