エレキギターには数多くのモデルがありますが、種類を整理する軸は2つに集約できます。「ボディ形状」と「ピックアップ」です。そして音色を最も左右するのは、ボディの形ではなくピックアップです。
ピックアップとは、弦の振動を磁界の変化として捉え、電気信号に変える発電装置のことです。同じボディでもピックアップを載せ替えれば音色は大きく変わります。逆に言えば、ボディ形状は弾き心地・サスティン・ハウリング耐性を決める「器」であり、音の素性そのものはピックアップが握っています。
本記事では、この2軸で主要なタイプを整理します。そのうえで音響メディアとして、種類の違いが「アンプをマイクで録るか、ラインで録るか」という録り音の判断にどう効くかまで橋渡しします。
INDEX≡目次
- 1エレキギターの種類は「ボディ形状」と「ピックアップ」の2軸で見る
- ►音色を最も左右するのはピックアップ
- ►ボディ形状は「ピックアップの器」として効く
- 2ボディ形状で見るエレキギターの主なタイプ
- ►ストラトキャスター系(ソリッド/シングルコイル中心)
- ►テレキャスター系(ソリッド/ブライトな素性)
- ►レスポール系(アーチトップ・ソリッド/ハムバッカー)
- ►セミアコ(セミホロウ)系
- ►フルアコ(フルホロウ)系
- 3ピックアップの種類が音色を決める
- ►シングルコイル:輪郭とハイ、その代わりのノイズ
- ►ハムバッカー:太さと出力、ハムを打ち消す構造
- ►P-90:両者の中間に立つ大型シングルコイル
- 4タイプ別・音色とジャンルの対応と「向かない用途」
- ►得意なジャンルと音の傾向
- ►それぞれの弱点・不向きを正直に
- 5種類の違いが録り音を変える:マイク録りとライン録りの判断軸
- ►アンプをマイクで録る(SM57)か、DIでライン録りするか
- ►ピックアップ出力とゲイン設計の関係
- 6まとめ:自分のギターの音の素性を知ることが音作りの起点
- 7よくある質問(FAQ)
エレキギターの種類は「ボディ形状」と「ピックアップ」の2軸で見る

エレキギターの種類は、ボディ形状とピックアップの組み合わせで決まります。結論から言えば、弾き心地や見た目の印象はボディ形状が、出音のキャラクターはピックアップが担います。両者は独立した軸であり、分けて考えると種類の違いが整理しやすくなります。
コイル1つで弦振動を拾う
| 構造 | コイル1つ |
| 音色 | 輪郭が明るく、ハイの抜けが良い |
| ノイズ | ハムノイズを拾いやすい |
2コイルを逆巻き・逆磁極で接続
| 構造 | コイル2つ(逆巻き・逆磁極/直列) |
| 音色 | 太く中低域が豊か、出力は約2倍 |
| ノイズ | 同相のハムを互いに打ち消す |
音色を最も左右するのはピックアップ
ピックアップは、弦の振動を電気信号へ変換する起点です。ここで拾われた信号がアンプやレコーディング機材へ送られるため、音の輪郭・太さ・ノイズの量はまずピックアップで決まります。編集部でも、同じソリッドボディのギターでシングルコイルとハムバッカーを載せ替えたことがありますが、ボディは同一でも出てくる音はまったく別物でした。種類を考えるとき、ピックアップを主役に据えるのはこのためです。
ボディ形状は「ピックアップの器」として効く
ボディ形状は音色の源ではありませんが、無関係でもありません。ボディの材・厚み・空洞の有無は、弦振動の伝わり方やサスティン(音の伸び)、そしてハウリングの起きやすさに影響します。つまりボディ形状は、ピックアップが拾う振動の前提条件をつくる器です。弾きやすさや重量という実用面も、ここで決まります。
ボディ形状で見るエレキギターの主なタイプ
ボディ形状は、空洞の有無で大きく「ソリッド(中身が詰まったボディ)」「セミホロウ(一部が空洞)」「フルホロウ(全体が空洞)」に分けられます。ここでは代表的な系統を、音の傾向と弱点をあわせて整理します。型の通称は一般名詞として扱い、固有のモデル名は各メーカーの公式表記に従います。
ストラトキャスター系(ソリッド/シングルコイル中心)
ストラトキャスター系は、Fender社のStratocasterに代表されるソリッドボディです。体に沿うコンター加工が施され、シングルコイルを3基搭載する構成が定番です。音は輪郭がはっきりし、クリアで抜けのよい高音域が持ち味です。クリーンからクランチまで対応しますが、シングルコイル特有のハムノイズを拾いやすい点は弱点として理解しておく必要があります。
テレキャスター系(ソリッド/ブライトな素性)
テレキャスター系は、同じくFender社のTelecasterに代表される、構造がシンプルなソリッドボディです。ブリッジ側のピックアップが金属製のブリッジプレートと一体になっており、アタックの強いブライトな音が出ます。カッティングや単音のキレを活かす場面で力を発揮しますが、太く甘い音を主役にしたいジャンルでは物足りなさを感じることもあります。
レスポール系(アーチトップ・ソリッド/ハムバッカー)
レスポール系は、Gibson社のLes Paulに代表されるアーチトップのソリッドボディです。マホガニー系のボディにメイプルトップを組み合わせ、ハムバッカーを2基搭載する構成が定番です。中低域に厚みのある太い音が持ち味で、ロックやブルース、ジャズの太いトーンに向いています。一方で本体が重くなりやすく、長時間の演奏では負担になる点が弱点です。
セミアコ(セミホロウ)系
セミアコは、ボディ中央にセンターブロックと呼ばれる芯材を持ち、その両翼が空洞になった構造です。Gibson社のES-335が代表機種です。空洞によるエアー感とサスティンを得つつ、中央のソリッド部分のおかげでフルアコより高いハウリング耐性を持ちます。歪ませたロック系の音にも対応できる柔軟さがありますが、完全なソリッドに比べると大音量・高ゲイン時の取り回しには配慮が要ります。
フルアコ(フルホロウ)系
フルアコは、ボディ内部全体が空洞のフルホロウ構造です。アコースティックギターに近い箱鳴りを持ち、アタック感が強く、サスティンは短めです。ジャズで好まれる丸く角のないメロウな音が持ち味です。ただしアンプとボディの共鳴によりハウリングが起きやすく、強く歪ませる用途には向きません。クリーン主体で使う前提の楽器と考えると素性が掴みやすくなります。
ピックアップの種類が音色を決める
音色の核心はピックアップにあります。エレキギターのピックアップは、大きくシングルコイルとハムバッカーに分かれ、その中間に位置するP-90があります。それぞれ構造が異なり、出力・帯域・ノイズ耐性に違いが出ます。
シングルコイル:輪郭とハイ、その代わりのノイズ
シングルコイルは、1つのコイルで弦振動を拾うピックアップです。音の輪郭がはっきりし、高音域の抜けとアタックのキレが持ち味です。一方で、コイルが1つであるため外来の電源ノイズ(ハムノイズ)を拾いやすく、照明や電源環境の悪い場所では「ジー」というノイズが目立つことがあります。クリーンやカッティングで真価を発揮する一方、ノイズ管理は使い手側の課題になります。
ハムバッカー:太さと出力、ハムを打ち消す構造
ハムバッカーは、2つのコイルを逆巻き・逆磁極で組み合わせ、直列に接続したピックアップです。2つのコイルで信号は足し合わせ、同相で入ってくるハムノイズは互いに打ち消し合う仕組みになっています。この構造によりノイズに強く、出力はシングルコイルのおよそ倍に達します。音は太く、中低域に成分が多いのが特徴で、ロックやハードロックの歪み、ジャズの太いクリーンに向いています。名称の「ハムバッカー」も、ハム(hum)を打ち消す(buck)ことに由来します。
P-90:両者の中間に立つ大型シングルコイル
P-90は、コイルが1つのシングルコイル構造ながら、ボディサイズが大きく出力の高いピックアップです。一言で言えば「大型で高出力のシングルコイル」で、シングルコイルの芯のある抜けと、ハムバッカーに近い中低域の太さを併せ持ちます。実際、Gibson社のハムバッカーはP-90と同等の出力を目標に開発された経緯があります。ただし構造はシングルコイルのため、ハムノイズはシングルコイル相応に拾います。ガレージロックやパンク、ブルースで好まれる、両者の中間的な存在です。
タイプ別・音色とジャンルの対応と「向かない用途」
ピックアップとボディの組み合わせで、得意なジャンルの傾向はおおむね決まります。ただし、どのタイプにも不向きな用途があります。素性を理解したうえで選ぶことが、後の音作りを楽にします。
得意なジャンルと音の傾向
シングルコイル中心のソリッドは、ファンクのカッティングやクリーン主体のサウンドで抜けのよさが活きます。ハムバッカー搭載のソリッドは、歪みを伴うロックや、太いクリーンが欲しいジャズで選択肢に入ります。P-90機はガレージやパンク、ブルースのザラついた中域で持ち味が出ます。セミアコは歪みも扱える箱モノとしてブルースやロックに、フルアコはクリーン主体のジャズに向いています。
それぞれの弱点・不向きを正直に
シングルコイルは、高ゲインのメタル系ではノイズ管理の手間がかかります。ハムバッカーは、繊細なクリーンの音の分離という点ではシングルコイルに一歩譲る場面があります。フルアコは強い歪みでハウリングが起きやすく、大音量のロック用途には向きません。レスポール系は音の太さと引き換えに重量が増えます。どのタイプにも「得意」と「不得意」が同居している、という前提を持つと選定を見誤りにくくなります。
種類の違いが録り音を変える:マイク録りとライン録りの判断軸
ここからが音響メディアの本題です。ピックアップの出力と帯域の素性は、録音時の判断を実際に変えます。結論から言えば、ギターの種類は「アンプをマイクで録るか、ラインで録るか」「どれだけゲインを用意するか」に直結します。
アンプをマイクで録る(SM57)か、DIでライン録りするか
エレキギターの録音には、大きく2つの経路があります。アンプから出た音をマイクで拾う「マイク録り」と、ギターの信号を直接機材へ送る「ライン録り」です。アンプの鳴りやキャビネットの箱感まで含めて収めたいときは、定番のダイナミックマイクであるSM57をアンプ前に立てるマイク録りが基本になります。マイクの選び方はダイナミックマイクとはで整理しています。一方、アンプを通さずクリーンな素の信号を確保したい、あるいは後段でアンプシミュレーターを使いたい場合は、楽器の信号をマイクケーブルで送れる形式へ変換するDI(ダイレクトボックス)を使ったライン録りが選択肢になります。
ここでピックアップの素性が効きます。シングルコイルのクリアな信号はライン録りでも素直に通りますが、ハムノイズが乗りやすいため、録音環境の電源やノイズ対策が前提になります。編集部でシングルコイル機をライン録りした際、最初は「ジー」というハムが消えず、コンセントの取り回しとアース環境を見直してようやく実用レベルに収まった経験があります。ハムバッカー機やセミアコは出力が高く太いぶん、マイク録りでアンプの中低域を活かす方向と相性がよい場面が多いです。
ピックアップ出力とゲイン設計の関係
ピックアップの出力差は、録音系のゲイン設計にも影響します。出力の低いシングルコイルは、入力側で十分なクリーンゲインを確保しておくと余裕を持って録れます。逆に出力の高いハムバッカーやP-90は、入力段で過大入力にならないようゲインを抑える配慮が要ります。この入口を担うのがオーディオインターフェースで、確保できるゲイン量と入力の余裕(ヘッドルーム)が、種類の異なるギターを安定して録れるかを左右します。
なおセミアコやフルアコをライブで歪ませる場合、ボディ構造由来のハウリングが録り音にも回り込みます。編集部でセミアコを歪ませて使った際、センターブロックのおかげでフルアコよりは抑えられたものの、アンプとの距離と音量の詰めは必要でした。種類ごとのこうした癖を知っておくと、現場での対処が早くなります。
まとめ:自分のギターの音の素性を知ることが音作りの起点
エレキギターの種類は、ボディ形状とピックアップの2軸で整理できます。弾き心地やサスティン、ハウリング耐性はボディ形状が、音色の核心はピックアップが決めます。シングルコイルは輪郭とハイ、ハムバッカーは太さと出力とノイズ耐性、P-90はその中間という素性を押さえておけば、ジャンルとの相性も見通せます。
そして音響メディアの視点を加えるなら、種類選びは「録り音の素性選び」でもあります。ピックアップの出力と帯域は、マイク録りかライン録りかの判断と、ゲイン設計に直結します。自分のギターがどんな信号を出す楽器なのかを把握しておくことが、安定した音作りと録音の起点になります。
よくある質問(FAQ)
Q. シングルコイルとハムバッカー、録音にはどちらが向いていますか?
A. 用途によります。クリーンやカッティングで輪郭と抜けを活かしたいならシングルコイル、歪みや太いクリーンを安定して録りたいならハムバッカーが向きます。シングルコイルはハムノイズを拾いやすいため、録音環境の電源・アース対策を前提にしてください。
Q. セミアコとフルアコの違いは何ですか?
A. ボディ構造が違います。セミアコは中央にセンターブロック(芯材)があり両翼が空洞、フルアコはボディ全体が空洞です。セミアコはハウリング耐性が高く歪みも扱えますが、フルアコは箱鳴りが強くアタック感がある一方、ハウリングしやすく強い歪みには向きません。