単一指向性マイクとは|指向性4パターンの違いと用途別の選び方を解説

2026.06.03
コラム・基礎知識

配信中にエアコンやキーボードの音が入り込む、会議で声が遠く聞こえる。そんな経験はないでしょうか。こうした悩みの多くは、マイクの「指向性」を理解すると解決の糸口が見えてきます。

単一指向性マイクとは、正面の音を主に拾い、側面・背面の音を抑える指向性パターンのマイクのことです。配信や会議で雑音を抑えたいなら単一指向性、空間全体を録りたいなら無指向性、向かい合った対談を1本で録るなら双指向性が基本軸になります。

本記事では、Sound Picks編集部が現場で得た判断軸をもとに、指向性の4パターンを極性図で整理し、用途別の選び分けと代表機の公式スペック、近接効果やかぶりといった実務までを通して解説します。

INDEX目次

単一指向性マイクとは|「正面の音を主に拾う」マイクのこと

単一指向性マイクとは、正面(マイクの真正面、0度方向)の音にもっとも感度が高く、側面や背面の音を抑えるマイクのことです。もっとも一般的な単一指向性のパターンを「カーディオイド」と呼びます。カーディオイドとは、感度の分布が心臓形(cardioid)を描くことに由来する指向性のことです。

ここで言う指向性とは、マイクが音をどの方向からどれだけ拾うか、という特性を指します。指向性は「極性パターン(ポーラーパターン)」という図で表されます。これは正面0度を上に置き、各方向から入る音への感度を線で結んだグラフのことです。線が外側に張り出している方向ほど感度が高く、内側にへこんでいる方向は拾いにくい、と読みます。

単一指向性は、無指向性に比べて正面以外の音を拾いにくいのが特徴です。そのため「環境音を拾わないマイク」を探している場合、まず候補に挙がるのが単一指向性になります。ただし、背面を完全に遮断するわけではない点には注意が必要です。

指向性の4パターン|無指向性・単一指向性・双指向性・超指向性

マイクの指向性は、大きく4つのパターンに整理できます。無指向性(オムニ)、単一指向性(カーディオイド)、双指向性(フィギュア8)、超指向性(スーパー/ハイパーカーディオイド)です。どれが優れているということではなく、用途に合うパターンを選ぶのが基本です。

図:指向性の極性パターン4種(正面0度を上に表示)
正面0°(上)
無指向性 全方向を均等に拾う
正面0°(上)
単一指向性 正面中心・背面を抑制
正面0°(上)
双指向性 正面と背面・側面を遮断
正面0°(上)
超指向性 正面を鋭く・背面に小ローブ
オレンジ=感度の高い方向、ネイビー=補助的に拾う方向。中心の点がマイク位置です。
  • 無指向性(オムニ)とは、全方向の音をほぼ均等に拾うパターンのことです。空間全体や複数人を自然に収録でき、近接効果が小さいのが利点です。ピンマイク(ラベリア)の多くがこのタイプです。
  • 単一指向性(カーディオイド)とは、正面を主に拾い背面を抑えるパターンのことです。極性図は心臓形を描きます。配信・ボーカル・楽器録りの定番です。
  • 双指向性(フィギュア8)とは、正面と背面を同程度に拾い、側面を強く落とすパターンのことです。向かい合った対談や、ステレオ録音の一部手法で使われます。
  • 超指向性(スーパーカーディオイド/ハイパーカーディオイド)とは、正面をカーディオイドよりさらに鋭く狙うパターンのことです。背面にわずかな感度(リアローブ)が残るかわりに、側面のかぶりに強いのが特徴です。
図:指向性4パターンの比較
指向性 拾う範囲 向く用途 かぶり耐性 近接効果
無指向性 全方向ほぼ均等 空間録音・複数人・ラベリア 低い ほぼ無し
単一指向性 正面中心・背面を抑制 配信・ボーカル・楽器 あり
双指向性 正面と背面・側面を遮断 対談・ステレオ録音 あり(強め)
超指向性 正面を鋭く・背面に小ローブ ライブ・かぶり対策 高い あり

単一指向性のなかの細分|カーディオイド・スーパー・ハイパー

単一指向性はひとくくりにされがちですが、鋭さの段階で呼び名が変わります。標準的なものがカーディオイド、より正面を絞ったものがスーパーカーディオイド、さらに鋭いのがハイパーカーディオイドです。鋭くなるほど側面のかぶりに強くなる一方、マイクを向ける角度のシビアさは増します。SHURE BETA 58Aはスーパーカーディオイドの代表例で、ライブの音被りを抑えたい場面で選ばれます。

用途別の選び分け|配信・会議・対談・楽器録り・環境録音

最適な指向性は用途によって変わります。雑音源が多い環境で1人の声を録るなら単一指向性、空間や複数人を自然に録るなら無指向性、向かい合う2人を1本で録るなら双指向性、という対応が基本です。下表を出発点に、自分の現場に当てはめてみてください。

図:用途別の推奨指向性
用途 推奨指向性 ねらい
配信・ゲーム実況 単一指向性 生活音・打鍵音を回避
会議(1人・近接) 単一指向性 話者の声を狙う
会議(卓上・複数人) 無指向性/バウンダリ 全員を均等に拾う
対談・インタビュー 双指向性 または 単一指向性2本 向かい合わせ収録
ボーカル・楽器録り 単一指向性 1音源に寄せて録る
空間・環境録音 無指向性 自然な空気感

配信・ゲーム実況|単一指向性で生活音を回避

配信や実況では、自宅の生活音をどこまで抑えられるかが音質の分かれ目になります。Sound Picks編集部が宅配信のセッティングを手伝った際、エアコンの送風音とメカニカルキーボードの打鍵音がマイクに被っていました。マイクを単一指向性のものに替え、口元の正面に向け、背面側にノイズ源が来るよう配置を変えたところ、打鍵音と空調音の被りが目立たなくなりました。配信で雑音に悩むなら、まず単一指向性とマイクの向きを見直す価値があります。用途別の機種選びは配信用マイクのおすすめで詳しく整理しています。

会議・Web会議|距離と指向性はトレードオフ

会議では、マイクと話者の距離が指向性の効きを左右します。単一指向性は雑音に強い反面、距離が離れると正面の声まで遠く小さくなります。1人がマイクに近づいて話す用途なら単一指向性、卓上に置いて複数人を拾う用途なら無指向性や境界(バウンダリ)型が向いています。バウンダリ型とは、卓上や床面に置いて反射面を利用するタイプのマイクのことです。「会議用にどれを選ぶか」は、人数と置き方から逆算するのが現実的です。

対談・インタビュー|双指向性1本か単一指向性2本か

向かい合った2人を録るなら、双指向性を1本で使う方法と、単一指向性を2本使う方法があります。双指向性1本は配線がすっきりしますが、側面から入る環境音の管理が前提になります。単一指向性2本は、各人の音量とかぶりを個別に管理しやすいのが利点です。収録後の編集自由度を重視するなら、2本構成のほうが扱いやすい場面が多いです。

楽器録り・環境録音|近接は単一・空間は無指向

楽器を1本ずつ近づけて録るなら単一指向性、部屋の響きや空間全体(アンビエンス)を録るなら無指向性が向いています。単一指向性は近接効果で低音の厚みを出しやすく、無指向性は位置による音色変化が小さく自然な空気感を残せます。狙う音が「点」か「面」かで選ぶと、迷いが減ります。

単一指向性の代表機を公式スペックで横並び比較

単一指向性の定番は、SHURE SM58とSM57、audio-technica AT2020、SENNHEISER e 835です。いずれもカーディオイドで、より鋭いスーパーカーディオイドを選ぶならSHURE BETA 58Aが候補になります。下表は各社公式の指向特性と周波数特性を並べたものです。価格は変動が大きいため、実勢価格は各販売店でご確認ください(2026年6月時点の参考)。

図:単一指向性の代表機 比較(各社公式仕様より)
機種 指向性 周波数特性 方式 出典
SHURE SM58 カーディオイド 50〜15,000Hz ダイナミック SHURE公式
SHURE SM57 カーディオイド 40〜15,000Hz ダイナミック SHURE公式
SHURE BETA 58A スーパーカーディオイド 50〜16,000Hz ダイナミック SHURE公式
audio-technica AT2020 カーディオイド 20〜20,000Hz(最大SPL 144dB) コンデンサー audio-technica公式
SENNHEISER e 835 カーディオイド 40〜16,000Hz ダイナミック Sennheiser公式
  • SHURE SM58:ボーカル定番のダイナミックで、カーディオイドの基準機と言える存在です。
  • SHURE SM57:楽器・スネア定番のダイナミックで、SM58と同系のカーディオイドです。
  • SHURE BETA 58A:スーパーカーディオイドで、かぶり・ハウリングに強い設計が実情です。
  • audio-technica AT2020:宅録定番のコンデンサーで、最大入力音圧144dB SPLと余裕があります。
  • SENNHEISER e 835:ステージボーカル用ダイナミックで、近接効果が控えめなのが扱いやすいところ。

ダイナミックとコンデンサーの違いまで踏み込みたい場合は、ダイナミックマイクのおすすめコンデンサーマイクのおすすめもあわせてご覧ください。登録外の機種はサウンドハウスの検索リンクからご確認ください(商品マスタ登録準備中)。

近接効果・オフアクシス・かぶり|指向性の実務トラブル

指向性は便利な反面、いくつかの副作用を伴います。代表が近接効果、オフアクシス特性、かぶりの3つです。仕組みを知っておくと、収録時の違和感を原因から潰せます。

近接効果とは、音源にマイクを近づけるほど低音が増して聞こえる現象のことです。単一指向性や双指向性で顕著に出て、無指向性ではほぼ起きません。声に厚みを足せる反面、近づきすぎると低音がこもります。BETA 58Aのように、近接効果を見込んで低域を整える設計の機種もあります。

オフアクシス特性とは、正面以外(軸外)から入る音の音色がどう変わるか、という特性のことです。安価なマイクほど軸外で音が痩せやすく、会議や複数人の収録で違和感の原因になります。正面の特性だけでなく、軸外の素直さも実用では効いてきます。

かぶりとは、目的外の音源がマイクに回り込んで入ることです。Sound Picks編集部が小規模ライブのPAを手伝った際、ボーカルマイクにドラムのかぶりが乗り、ハウリングが起きやすくなる場面がありました。スーパーカーディオイドのマイクに替え、最も感度の低い角度をモニタースピーカーへ向けることで、かぶりとハウリングを抑えています。かぶり対策の基礎はPAとはでも整理しています。

切替式マルチパターン機の活用|AKG C414 XLII・Blue Yeti

1本で複数の指向性を切り替えられるマイクもあります。用途が複数にまたがる場合や、あとから指向性を選びたい場合に向いています。代表がAKG C414 XLIIとBlue Yetiです。

AKG C414 XLIIは、無指向性・ワイドカーディオイド・カーディオイド・ハイパーカーディオイド・双指向性を含む9つの極性パターンを切り替えられるコンデンサーマイクです(AKG公式)。スタジオで1本を多用途に使い回したいプロ向けの選択肢になります。

Blue Yetiは、カーディオイド・無指向性・ステレオ・双指向性の4パターンを本体ノブで切り替えられるUSBコンデンサーマイクです(Logicool G公式)。配信から対談、楽器録りまで、ソフト不要で指向性を切り替えたい人に向いています。固定式マイクと違い、収録シーンごとにパターンを選べるのが強みです。

よくある質問(FAQ)

Q1. 環境音を拾わないマイクはどれですか。

全方向を拾う無指向性より、正面を狙う単一指向性、さらに鋭い超指向性のほうが環境音を拾いにくくなります。あわせて、マイクと口元の距離を縮め、ノイズ源を背面側に置く設置でも効果が出ます。

Q2. 会議にはどの指向性が向きますか。

1人がマイクに近づいて話すなら単一指向性、卓上に置いて複数人を拾うなら無指向性や境界(バウンダリ)型が向いています。人数と置き方から逆算して選ぶのが現実的です。

Q3. 単一指向性のデメリットは何ですか。

近接効果で低音がこもりやすいこと、マイクの軸がずれると音色や音量が変わること、背面を完全には遮断できないことです。向きと距離の管理が前提になります。

Q4. iPhoneやスマホの外付けマイクの指向性は何ですか。

単一指向性のモデルが多い傾向ですが、製品によって異なります。無指向性や切替式もあるため、購入前に各メーカーの公式仕様で指向性を確認することをおすすめします。

Q5. 指向性は後から変えられますか。

固定式のマイクでは変えられません。指向性を切り替えたい場合は、AKG C414 XLIIやBlue Yetiのようなマルチパターン機を選ぶ必要があります。

Q6. 配信では無指向性と単一指向性のどちらが無難ですか。

自宅の生活音が多い環境では、雑音を拾いにくい単一指向性が無難です。静かな専用ブースで複数人を自然に録るなど、空間ごと収録したい場合は無指向性も選択肢に入ります。

まとめ|指向性を理解すれば「狙った音」を録れる

単一指向性マイクとは、正面の音を主に拾い側面・背面を抑えるマイクのことです。指向性は無指向性・単一指向性・双指向性・超指向性の4パターンに整理でき、配信や会議は単一指向性、空間録音は無指向性、対談は双指向性、という用途別の対応が基本になります。近接効果やかぶりといった副作用も、仕組みを知れば原因から対処できます。用途が複数にまたがるなら、AKG C414 XLIIやBlue Yetiのような切替式マルチパターン機も選択肢です。

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