配信・ポッドキャスト機材を調べると必ず名前が挙がるのがSHURE SM7Bです。放送局発祥のダイナミックマイクで、独特の落ち着いた音と環境ノイズへの強さから世界的なベンチマークとなりました。本記事ではSHURE SM7Bの系譜から、公式スペック、使い方の現場知見、ゲインアンプの必要性、向く用途/向かない用途まで順に整理します。最後まで読んでいただくと、SM7Bが自分の用途に合うかの判断と、運用に必要な周辺機材の見当が付きます。
INDEX≡目次
- 1SHURE SM7Bとは|放送局発のダイナミックマイク
- ►SM7B の系譜とSM7/SM7Aとの違い
- ►ダイナミック型である意味(環境ノイズに強い)
- 2SHURE SM7B のスペック|公式値で押さえる
- ►周波数特性とプレゼンスブーストスイッチ
- ►感度の低さとゲインアンプ必須の理由(要+60dB前後)
- 3SHURE SM7B の使い方|配信・録音セッティング
- ►距離と近接効果(5〜10cm運用)
- ►ポップフィルター・ウインドスクリーンの使い分け
- ►スイッチ操作|プレゼンスブースト/低域ロールオフ
- ►アームスタンドとショックマウントの相性
- 4ゲインアンプ・接続機材|SM7B運用の落とし穴
- ►必要ゲインの目安(合計+60dB以上)
- ►インラインプリアンプ(Cloudlifter CL-1/FetHead)
- ►ハイゲインプリ搭載インターフェース(GoXLR/Volt 276/4i4等)
- ►ノイズフロアとファントム電源の扱い
- 5SM7B が向く用途/向かない用途
- ►向く用途|ポッドキャスト・配信・ナレーション・ロックボーカル
- ►向かない用途|アコギ生録/クラシック歌唱/アンビエンス
- ►代替候補|Electro-Voice RE20/Heil PR40/RODE PodMic
- 6よくある質問
SHURE SM7Bとは|放送局発のダイナミックマイク
SHURE SM7Bは放送現場で長年使われてきたダイナミック型マイクの定番です。1976年発売のSM7の系譜を引き継ぎ、現行モデルは1999年から続いています。ポッドキャスト・配信ブームを背景に世界的な再評価が進み、ナレーション・配信の事実上の標準機の1つになりました。指向性カーディオイドで環境ノイズに強い特性が評価のポイントです。
編集部が宅録ナレーション収録を始めた際、当初はコンデンサーマイクを使っていました。エアコンの稼働音や室外の交通音が気になる頻度が多く、SM7Bへ切り替えたところ環境ノイズの混入が劇的に減った経験があります。配信・ポッドキャスト用途で世界的に評価される理由を、現場の体感として実感しました。
SM7B の系譜とSM7/SM7Aとの違い
SM7Bの源流は1973年のSM7に遡ります。1999年に現行のSM7Bへリニューアルされ、グリル形状と内部マウントが改良されました。SM7Aは中間モデルで、本体重量や接続部の仕様が微妙に異なります。Michael JacksonのThriller収録(1982年)で使われたのは初代SM7で、SM7Bへの代替わりを経て現在のポッドキャスト・配信の定番となりました。
ダイナミック型である意味(環境ノイズに強い)
SHURE SM7Bがダイナミック型である意味は、環境ノイズへの強さに直結します。コンデンサーマイクは高感度ゆえに小さな環境音まで拾いますが、ダイナミック型は感度が抑えられている分、口元の近接音を中心に収音できます。エアコン稼働音・室外騒音・PCファン音が気になる宅録環境で、SM7Bが選ばれる根本的な理由がここにあります。
SHURE SM7B のスペック|公式値で押さえる
SHURE SM7Bは周波数特性50Hz〜20kHz、指向性カーディオイド、感度-59dBV/Pa(1.12mV/Pa @1kHz)、出力インピーダンス150Ωのダイナミックマイクです。感度の低さがゲインアンプの必要性に直結する重要な数値です。
ナレーション・ボーカルに必要な全帯域をフラットにカバー。
前方の音を中心に収音し、環境ノイズの混入を抑える。
業務用プリアンプとの相性が良い標準値。
周波数特性とプレゼンスブーストスイッチ
SM7Bの周波数特性は50Hz〜20kHzで、ナレーション・ボーカルに必要な帯域をフラットにカバーします。本体背面に2つのスイッチがあり、低域ロールオフ(80Hz以下を緩やかにカット)とプレゼンスブースト(2-7kHz付近を持ち上げる)を選択できます。ポッドキャストではフラット、ボーカル録音では用途に応じて切り替える運用が一般的です。
感度の低さとゲインアンプ必須の理由(要+60dB前後)
感度-59dBV/PaはSHURE SM58(-54.5dBV/Pa)より約5dB低い数値です。発声音圧が94dB SPLとして、出力電圧は約1.12mVと小さく、ライン入力レベル(約-10dBV〜+4dBu)まで持ち上げるには合計+60dB前後のゲインが必要になります。この事実が「SM7BはCloudlifterが必要」と語られる技術的な根拠です。
SHURE SM7B の使い方|配信・録音セッティング
SHURE SM7Bは口元から5〜10cm程度の近接使用が前提です。ポッドキャスト向けの「ラジオDJ風」セッティングは近接効果による低域増強を活用しており、距離と角度で音色が大きく変わります。距離の管理が音作りの肝です。

距離と近接効果(5〜10cm運用)
SM7Bは口元から5〜10cmで使うのが王道です。距離が近いほど近接効果で低域が増強され、放送らしい「太い声」になります。距離が離れると本来のフラットな音色に戻り、環境ノイズも拾いやすくなる関係です。ナレーション用途では5〜7cm、ポッドキャストでは7〜10cmが目安です。
ポップフィルター・ウインドスクリーンの使い分け
SM7Bには付属の薄手ウインドスクリーン(A7WS)が同梱されています。ポッドキャストや配信のように口元至近距離で使う用途では、外付けのポップフィルターを併用するとブレス音と破裂音をより抑えられます。屋内収録ではA7WSのみで十分なケースも多く、用途で使い分けます。
| 方式 | 追加ゲイン | 代表機種 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| インラインプリ (Cloudlifter系) |
+25 〜 +27dB | Cloudlifter CL-1 FetHead |
既存IFに+ブースト |
| ハイゲインプリ 搭載IF |
+65dB以上 | Volt 276 Scarlett 4i4 (G4) GoXLR |
ブースター不要 |
| 専用プリアンプ | +60dB以上 | dbx 286s Cloudlifter CL-Z |
音作りも含めた本格運用 |
スイッチ操作|プレゼンスブースト/低域ロールオフ
背面の2つのスイッチは用途で使い分けます。配信・ポッドキャストでは低域ロールオフON+プレゼンスフラットが定番、ロック歌唱の録音ではプレゼンスブーストONで抜けを稼ぐ場合があります。スイッチ位置を変えると周波数特性が明確に変わるので、セッション開始前の確認が大切です。
アームスタンドとショックマウントの相性
SM7Bは本体重量が約766gとダイナミックマイクの中で重めです。安価なアームスタンドだと垂れ下がるため、Rode PSA1、Blue Compass、Heil PL-2T等の耐荷重に余裕のあるアームが推奨されます。SM7B本体には内蔵ショックマウントがあるため、追加のショックマウントは不要なケースが多いです。
ゲインアンプ・接続機材|SM7B運用の落とし穴
SHURE SM7B最大のハードルが「ゲイン不足」です。一般的なオーディオインターフェース内蔵プリだけでは音量が足りず、別途インラインプリアンプかハイゲインプリアンプ搭載インターフェースが必要になります。SM7B導入時の最大の落とし穴です。
必要ゲインの目安(合計+60dB以上)
SM7Bを快適に運用するには合計+60dB以上のクリーンゲインが必要です。一般的なオーディオインターフェースのマイクプリは+50〜55dB程度で、SM7Bには+5〜10dB足りない計算になります。ゲインを最大まで上げるとプリアンプのノイズフロアが目立つため、別途ブースターを挟むのが定石です。
インラインプリアンプ(Cloudlifter CL-1/FetHead)
Cloudlifter CL-1は+25dB、FetHeadは+27dBのクリーンブーストを提供するインラインプリアンプです。マイクとインターフェースの間に挟む形で接続し、ファントム電源(+48V)で駆動します。SM7B出力をハイインピーダンス・ローノイズで増幅でき、世界的にSM7B運用の定番構成として認知されています。
ハイゲインプリ搭載インターフェース(GoXLR/Volt 276/4i4等)
近年はSM7B等のダイナミック型を直結できるハイゲインプリ搭載インターフェースが増えました。Universal Audio Volt 276、Focusrite Scarlett 4i4(第4世代)、TC-Helicon GoXLR等が代表機です。マイクプリで+60dB以上の出力を提供し、Cloudlifter等のブースターなしでSM7Bを駆動できます。
ノイズフロアとファントム電源の扱い
SM7B本体はダイナミック型のためファントム電源は不要です。Cloudlifter/FetHead等のブースターを使う場合は、それらの機材にファントム電源を供給します。ファントム電源をSM7Bへ直接送る運用は、本体への悪影響はないものの不要な電流が流れる場合があるため、ブースターを挟む場合のみONにする運用が無難です。
SM7B が向く用途/向かない用途
SHURE SM7Bは万能ではありません。ポッドキャスト・配信・ボーカル録音には強い反面、繊細なアコースティック楽器や歌唱の細部表現にはコンデンサーマイクの方が向きます。用途の見極めが導入成功の鍵です。
Rode PSA1等の耐荷重に余裕のあるアームスタンドを設置。SM7B本体766gに耐える剛性が必要。
背面の低域ロールオフON、プレゼンスフラットを配信デフォルトに設定。
口元から5〜10cmの近接距離にセット。近接効果で太い声を作る運用が王道。
外付けポップフィルター併用でブレス音と破裂音を抑える。屋内収録ならA7WSのみでも可。
Cloudlifter等のブースター経由で+60dB以上を確保。ピークが-12〜-6dBFSに収まるよう調整。
向く用途|ポッドキャスト・配信・ナレーション・ロックボーカル
SHURE SM7Bが本領を発揮するのはポッドキャスト・配信・ナレーション・ロックボーカルです。環境ノイズに強く、近接効果で太い声を作れる特性が活きます。米国のポッドキャスト市場ではJoe Rogan Experience等の人気番組で採用例があり、世界的な配信機材の標準と位置づけられています。
向かない用途|アコギ生録/クラシック歌唱/アンビエンス
SM7Bが向かないのは、アコースティックギターの生録・クラシック歌唱・アンビエンス収録です。ダイナミック型のため高域の繊細さでは大口径コンデンサーマイクに劣り、空間表現も狭くなります。AKG C414、Neumann KM184、RODE NT1-A等のコンデンサーマイクの方が、これらの用途では明確に向きます。
代替候補|Electro-Voice RE20/Heil PR40/RODE PodMic
SM7Bと近いキャラクターを持つ代替機種も検討に値します。Electro-Voice RE20は放送現場で長年使われてきた定番、Heil PR40は中域の押し出しが強い米国製ダイナミック、RODE PodMicはコストパフォーマンスに優れる新興機です。用途と予算でSM7Bと比較検討するとよい選択肢になります。
よくある質問
Q. SHURE SM7Bはオーディオインターフェース直結で使える? A. ゲインが足りない場合がほとんどです。一般的なインターフェースのマイクプリは+50〜55dB程度で、SM7Bには合計+60dB以上が必要です。インラインプリアンプの併用を推奨します。
Q. Cloudlifterは必須? A. ハイゲインプリ搭載インターフェース(Volt 276/Scarlett 4i4 第4世代以降/GoXLR等)なら不要な場合もあります。それ以外の機材ではCloudlifter/FetHead系を1台挟むのが安全です。
Q. SM7Bでアコースティックギターは録れる? A. 可能ですがコンデンサーマイクの方が繊細です。SM7Bはダイナミック型で高域の繊細さでは劣るため、アコギソロや生楽器メインの収録にはAKG C414、Neumann KM184等のコンデンサーマイクが向きます。
Q. ファントム電源は必要? A. SM7B本体には不要です。Cloudlifter/FetHead等のインラインプリアンプを接続する場合は、それらのプリアンプにファントム電源を供給します。
Q. 中古でSM7(旧モデル)を見つけた。買っても大丈夫? A. 音色はSM7Bと近いですが、グリル形状や周波数特性が微妙に異なります。1976年発売の古いモデルの場合はカプセル劣化の可能性があるため、動作確認できる店での購入を推奨します。