録音した音声を聴き返したら、キーボードのタイピング音や足音、マイクスタンドに触れた「ゴトッ」という音が混ざっていた——宅録や配信でこうした経験はないでしょうか。これらの多くは、机や床、スタンドを伝わってマイクに届く「振動」が原因です。
ショックマウントとは、こうした固体伝播音(こたいでんぱおん:机・床・スタンドなどの物体を伝わってくる振動ノイズ)を弾性体で遮断し、マイク本体に伝えないための器具です。コンデンサーマイクのように感度が高いマイクほど効果が分かりやすく、宅録・配信・ナレーション収録の定番アクセサリーになっています。
この記事では、ショックマウントの仕組みと役割、そして失敗しないための選び方を「対応マイク径・スタンドのネジ規格・形状」という3つの適合確認に絞って解説します。
INDEX≡目次
- 1ショックマウントとは?マイクの振動ノイズを断つ器具
- ►固体伝播音と空気伝播音の違い
- ►仕組み(弾性サスペンションで振動を減衰させる)
- 2ショックマウントの役割とできること・できないこと
- ►防げるノイズ(机のタイピング・足音・接触音)
- ►防げないノイズ(吹かれ・空調・反響)
- 3ショックマウントの選び方|3つの適合確認
- ►①対応マイク径(mm)を合わせる
- ►②スタンド側のネジ規格(3/8インチ・5/8インチ)と変換アダプタ
- ►③形状・方式(サスペンション・一体成形・クリップ)
- 4純正と汎用、内蔵ショックマウントの違い
- ►純正(マイク付属)と汎用の使い分け
- ►マイク内蔵(インターナル)ショックマウントとの違い
- 5ポップフィルターとの併用と設置のコツ
- ►併用で何が変わるか
- ►エラスティック/ゴムの劣化と交換
- 6まとめ|まず「マイク径×ネジ径」の適合から
ショックマウントとは?マイクの振動ノイズを断つ器具
ショックマウントとは、マイクを弾性サスペンション(ゴムやエラスティックコードによる吊り構造)で宙に浮かせるように固定し、スタンドから伝わる振動をマイクへ届かせないためのホルダーです。電気的なノイズではなく、物体を伝わる振動に対する対策である点がポイントになります。
固体伝播音と空気伝播音の違い
マイクに乗るノイズは、伝わり方で大きく二つに分けられます。固体伝播音は、机・床・マイクスタンドといった物体を振動として伝わってくる音です。タイピングの打鍵、足音、机に肘をついた振動などが該当します。一方の空気伝播音は、空気を伝わってくる音で、声そのものや息がマイクに当たる「吹かれ」、空調の暗騒音などが含まれます。
ショックマウントが受け持つのは前者の固体伝播音です。空気伝播音の代表である吹かれはポップフィルターの担当であり、両者は守備範囲が異なります。
仕組み(弾性サスペンションで振動を減衰させる)
構造はシンプルです。外側のリング(スタンドに固定する側)と、内側のマイクを保持するクレードルを、ゴムやエラスティックコードのサスペンションでつないでいます。スタンドから来た振動はこの弾性体でいったん吸収・減衰され、内側のマイクにはほとんど伝わりません。バネやゴムでクッションを挟むのと同じ考え方です。
近年は、Rycote の Lyre(ライアー:竪琴形の一体成形サスペンション)のように1枚のプラスチックを一体成形して弾性サスペンションとする方式もあります。ゴムのように伸び切って劣化しにくいのが特徴です。
ショックマウントの役割とできること・できないこと
ショックマウントの役割は、スタンドや机を経由してマイクに伝わる振動ノイズを減らすことに尽きます。万能ではなく、防げる音と防げない音をあらかじめ理解しておくと、導入後に「思ったより静かにならない」と感じずに済みます。
防げるノイズ(机のタイピング・足音・接触音)
机に置いたデスクアームマイクで多いのが、タイピングやマウスクリックの打鍵が振動として乗るケースです。床から伝わる足音、スタンドに服や手が触れたときの接触音も、固体伝播音なのでショックマウントの守備範囲に入ります。
編集部が宅録ブースで検証した際も、机を指で軽く叩いた振動は、ショックマウントを外した状態だと波形にはっきり現れました。装着すると同じ操作でも振動の山が明確に小さくなり、固体伝播音の遮断という役割がそのまま確認できます。
防げないノイズ(吹かれ・空調・反響)
一方で、声に息が混じる吹かれ(ボーカルの破裂音で生じるポップノイズ)は空気伝播音なので、ショックマウントでは防げません。これはポップフィルターの担当です。エアコンやPCファンの暗騒音、部屋の反響(残響)も空気を伝わる音であり、別の対策(吸音・ノイズゲート・録音環境の見直し)が必要です。ショックマウントは「振動対策の一手」であり、ノイズ対策全体の一部だと捉えるのが実情に合っています。
ショックマウントの選び方|3つの適合確認
ショックマウントは「自分のマイクとスタンドに物理的に合うか」を最優先で確認します。具体的には、対応マイク径・スタンド側のネジ規格・形状の3点です。音質よりもまず適合、と覚えておくと失敗しにくくなります。
①対応マイク径(mm)を合わせる
ショックマウントには、保持できるマイクの直径(径)に範囲があります。純正品は付属するマイク専用に作られていることが多く、汎用品は径や重量に対応範囲が設けられています。手持ち・購入予定のマイクの直径(mm)を実測または公式スペックで確認し、対応範囲に収まるものを選びます。
②スタンド側のネジ規格(3/8インチ・5/8インチ)と変換アダプタ
マイクスタンドとホルダーをつなぐネジには規格があり、合っていないと取り付けできません。主な規格は次のとおりです。
| 通称 | ネジ規格 | ネジ直径(目安) | 主な採用 |
|---|---|---|---|
| SHURE規格 | 5/8インチ | 約15.875mm | SHURE系・北米系に多い |
| AKG規格 | 3/8インチ | 約9.525mm | 欧州系・多くのスタンドに多い |
| BTS規格 | 管用 G1/2インチ | 約20.955mm | 放送・業務用の一部 |
| JIS規格 | 5/16インチ | 約7.938mm | 国内規格の一部 |
3/8インチは「AKG規格」、5/8インチは「SHURE規格」とも呼ばれ、海外製マイクや国内製で採用が分かれます。規格が違っても、5/8→3/8などの変換ネジ(変換アダプタ)を1個用意すれば橋渡しできます。マイクやスタンドに変換ネジが付属していることもあるため、まず手持ちの付属品を確認すると無駄がありません。
ライブ配信のセッティングを手伝った現場では、ショックマウントは5/8インチ、スタンドが3/8インチで取り付けできず、5/8→3/8の変換アダプタを1個足して解決した例がありました。規格の不一致は「買い直し」ではなく「アダプタ」で解けることが多いです。
③形状・方式(サスペンション・一体成形・クリップ)
形状は主に三つです。サスペンション/エラスティック式は、リング状フレームにゴムやコードを張ってマイクを吊る最も一般的なタイプ。一体成形(Lyre型など)は、樹脂を一体成形した弾性サスペンションで、ゴムの伸びによる劣化が起きにくいのが特徴です。クリップ/挟み込み式は、汎用性が高く径の異なるマイクに対応しやすい一方、フィット感は純正に劣ることがあります。
汎用ショックマウントの一例として、Rycote InVision USM のような可変式の製品があります。対応径や重量の範囲は製品ごとに異なるため、具体的な数値は購入前に公式スペックで適合を確認してください。
純正と汎用、内蔵ショックマウントの違い
ショックマウントには「マイクに付属・対応する純正」「径可変の汎用」「マイク内部に組み込まれた内蔵式」があり、レイヤーが異なります。混同しやすいので整理しておきます。
純正(マイク付属)と汎用の使い分け
純正ショックマウントは、対象マイクにぴったり合うよう設計されており、フィット感や見た目の一体感に優れます。ただし、そのマイク専用または同系統のマイクに限られることが多く、別径のマイクには流用しにくいのが実情です。汎用ショックマウントは径や重量に対応範囲を持ち、複数のマイクで使い回せる柔軟性があります。マイクを買い替える可能性があるなら、対応範囲の広い汎用を選んでおく考え方もあります。
マイク内蔵(インターナル)ショックマウントとの違い
一部のマイクは、本体内部にカプセル(音を拾う部分)を弾性体で保持する内蔵ショックマウント(インターナルショックマウント)を備えています。これはマイク内部での防振であり、スタンドからマイク全体に伝わる振動を断つ外付けショックマウントとは役割が別です。内蔵式があるマイクでも、外付けショックマウントを併用することで、机やスタンド経由の振動にさらに対処できます。
ポップフィルターとの併用と設置のコツ
ショックマウントとポップフィルターは役割が異なり、併用が基本です。ショックマウントが固体伝播音(振動)、ポップフィルターが空気伝播音の一種である吹かれを受け持ちます。ナレーションやボーカル収録では、両方を組み合わせると振動ノイズと吹かれの両方に対処できます。
併用で何が変わるか
ポップフィルターとは、マイクの前に張る薄い膜またはメッシュで、「パピプペポ」などの破裂音で生じる息の風圧(吹かれ)を和らげるためのものです。ショックマウントと併用しても干渉せず、それぞれが別のノイズに効きます。多くのショックマウントにはポップフィルター用のアームを取り付けられるネジ穴があり、セットで運用しやすくなっています。
エラスティック/ゴムの劣化と交換
サスペンションに使われるゴムやエラスティックコードは、経年で伸びたり切れたりする消耗部品です。マイクが傾く、保持力が落ちたと感じたら交換時期のサインです。多くの製品で交換用のゴム・コードが部品として供給されており、本体ごと買い替えずに復帰できます。一体成形タイプはこの劣化が起きにくい設計です。
まとめ|まず「マイク径×ネジ径」の適合から
ショックマウントは、机・床・スタンドを伝わる固体伝播音を弾性サスペンションで遮断し、マイクに振動を届かせない器具です。吹かれや空調・反響といった空気伝播音には効かないため、ポップフィルターなどと役割分担して使うのが前提になります。
選ぶときは、対応マイク径(mm)、スタンドのネジ規格(3/8インチ=AKG規格/5/8インチ=SHURE規格。違えば変換アダプタで対応)、形状・方式の順に適合を確認します。純正・汎用・内蔵の違いを理解したうえで、まずは「自分のマイク径とスタンドのネジ径に合うか」から始めると、導入で失敗しにくくなります。