ドラムセットの名称と各パートの音|マイキング前に知る基礎知識

2026.06.07
入門・基礎

ドラムセットは、複数の打楽器を一人で同時に演奏できるよう組み合わせた「打楽器の集合体」です。パーツの名前がわからないと、譜面も機材リストもマイキングの解説も読み解けません。

ドラムセット全体(バスドラム・スネア・タム・シンバルの構成)
ドラムセット全体(バスドラム・スネア・タム・シンバルの構成)

結論から言えば、ドラムセットの基本は「5点セット」です。これはバスドラム(キック)、スネアドラム、ハイタム、ロータム、フロアタムという5つの太鼓に、ハイハットと複数のシンバルを加えた構成を指します。本記事では、各パートの名称と配置を整理したうえで、それぞれが「どんな音域の音を出すのか」、そして音響メディアらしく「収録(マイキング)でどう扱われるのか」までを一気通貫で解説します。録音やPA(Public Address、パブリック・アドレス)の現場に立つ前に押さえておきたい基礎知識として読んでいただければと思います。

INDEX目次

ドラムセットの名称:まず全体像と5点セットの基本構成

スタジオに組まれたドラムセット全体。スネア・タム・シンバル・ハイハットなど各パートがわかる
スタジオのドラムセット。スネア・タム・シンバル・ハイハットなど各パートで構成される。

ドラムセットの最も標準的な構成は「5点セット」で、太鼓5つ(バスドラム・スネア・ハイタム・ロータム・フロアタム)を基準に数えます。これにハイハットとクラッシュ/ライドのシンバル類、各種スタンドやペダルが加わって、私たちが見慣れたセットの形になります。

ドラムセット各パートの名称(正面俯瞰) クラッシュ ライド ハイハット ハイタム ロータム フロアタム スネア バスドラム 手前=奏者側/太鼓5つ+シンバル類の基本構成
図:ドラムセット各パートの名称。太鼓5つ(バスドラム・スネア・ハイタム・ロータム・フロアタム)にハイハット・クラッシュ・ライドが加わる。

5点セットを構成する太鼓

「点数」はシンバルを除いた太鼓(ドラム)の数で数えるのが一般的です。5点セットなら、バスドラム1・スネア1・タム2(ハイタム/ロータム)・フロアタム1の計5つです。タムが1つだけの構成は4点セット、フロアタムを増やせば6点セットと呼ばれます。まずはこの「太鼓の数で点数を数える」という考え方を押さえると、機材表記が読みやすくなります。

配置の基本(奏者から見た左右)

配置には演奏上の合理性があります。一般に、ハイハットは奏者から見て左側に置かれます。ハイハットのペダルを左足で踏むためです。リズムを刻むライドシンバルは右手で叩くことが多いため右側へ、クラッシュシンバルはバスドラムをはさんで左右に配置されるのが定番です。タムはバスドラムの上にハイタム・ロータムを、奏者の右側の床にフロアタムを置きます。

編集部が収録現場でセットを観察するときも、まずこの「左ハイハット・右ライド」の基本配置を確認します。配置がわかると、どこにどのマイクを立てるかの当たりがすぐ付くからです。

太鼓(ドラム)系パーツの名称と音

太鼓系は大きく分けて、バスドラム・スネアドラム・タム類の3グループです。それぞれ出る音域が異なり、低音をバスドラムが、中高域のアタックをスネアが、その中間をタムが受け持つと整理できます。

バスドラム(キック)

バスドラムは足元のペダルで打つ、セット内で最も低い音を出す太鼓です。「キック」とも呼ばれ、低域の土台をつくります。一般的に20Hz前後の超低域から数kHz帯まで成分を含み、曲のビートの基盤になります。サイズは22インチが標準的ですが、18〜24インチまで幅があり、口径が大きいほど低く太い音になる傾向があります。

編集部が収録の現場でキックを録るときは、フロントヘッド(叩く面と反対側)に開けた穴からマイクを内部に差し込み、ビーター(打面を叩く部分)が当たる位置を狙ってアタックを拾うことが多いです。低音だけを狙うとアタックが埋もれて輪郭がぼやけるため、ビーター付近のクリック感をどう拾うかが要になります。

スネアドラム

スネアドラムは、裏面に張られた「スナッピー(響き線)」が振動して「パンッ」「タンッ」という鋭い音を出す太鼓です。リズムのバックビートを担う、セットの主役と言える存在です。音域は胴鳴りの成分が概ね200〜400Hz付近、アタックやスナッピーの成分が2〜5kHz付近に出るとされ、低すぎず高すぎない中域に存在感があります。

収録ではスネアトップ(上面)とスネアボトム(下面)の2方向で録ることがあります。上面は胴全体の鳴りを、下面はスナッピーのザラついた成分を狙う狙い分けです。スネアの定番マイクとしては、頑丈で音圧に強いダイナミックマイクが長く使われてきました。

タムタム(ハイタム・ロータム)とフロアタム

タムは音程の異なる複数の太鼓で構成され、高い方からハイタム、ロータム、フロアタムの順に音が低くなります。バスドラムの上に設置する小〜中口径がハイタム・ロータム、奏者の右側の床にスタンドで自立する大口径がフロアタムです。フィルイン(おかず)で音程の移り変わりを演出する役割を持ちます。

チューニング次第ですが、10インチのタムでおよそ240Hz前後、16インチのフロアタムで90Hz前後といったように、口径が大きいほど基音が低くなります。収録では各タムにマイクを近接させますが、スタンドを林立させると邪魔になるため、リムに引っかけるクリップ式のマウントを使ってマイクを固定するのが現場の定番です。スネアと同じく中域のアタックが重要になるため、スネアやタム録りで定番のSM57が選ばれることがよくあります。

シンバル系パーツの名称と音

シンバル類は、ハイハット・クラッシュ・ライドの3種類が基本です。太鼓が「打点」の音を出すのに対し、シンバルは倍音を多く含む金属的な高域の余韻を受け持ち、リズムの刻みやアクセントを担当します。

ハイハットシンバル

ハイハットは2枚のシンバルを上下に重ね、左足のペダルで開閉して音色を変える仕組みです。閉じれば「チッ」と締まった刻み、開けば「シャー」と伸びる音になり、8ビートなどの基本リズムの刻みに多用されます。サイズは14インチが標準的で、高域成分が豊富なため収録ではオーバーヘッドや専用マイクで拾います。

クラッシュシンバル

クラッシュシンバルは、曲のアクセントや展開の切り替えで「シャーン」と鳴らすシンバルです。16〜18インチがよく使われ、奏者の左右に配置されることが多くあります。厚さにはTHIN(薄い)・MEDIUM(中間)・HEAVY(厚い)の区分があり、薄いほど立ち上がりが速く軽い音に、厚いほど音量と余韻が増える傾向があります。

ライドシンバル(ボウ・エッジ・カップ)

ライドシンバルは、リズムを継続的に刻むためのシンバルで、18〜22インチと大きめが標準です。叩く部位によって音が変わり、面の中ほどを叩く「ボウ」は粒立ちのよい刻み、外周の「エッジ」は広がりのある音、中央の盛り上がり「カップ」は「カンッ」という明るいアクセントになります。1枚で複数の表情を出せるのがライドの特徴です。

ハードウェア(ペダル・スタンド・スローン)の名称と役割

ドラムセットは太鼓とシンバルだけでは成立しません。それらを支え、足で操作するためのハードウェア(金物)が不可欠です。代表的なものを押さえておくと、セッティングや機材の貸し借りの会話がスムーズになります。

バスドラムペダルとハイハットスタンド

バスドラムペダルは、右足でビーターを動かしてバスドラムを打つための装置です。2つのビーターを両足で操作するツインペダルもあります。ハイハットスタンドは2枚のハイハットを保持し、左足のペダルで上のシンバルを上下させて開閉をコントロールします。この2つは「足で出す音」を司る、リズムの土台となるハードウェアです。

シンバルスタンド・スネアスタンド・スローン

シンバルスタンドはクラッシュやライドを任意の高さ・角度で支える支柱です。スネアスタンドはスネアドラムを3本足で挟んで保持します。そして奏者が座る椅子は「スローン」と呼ばれます。スローンの高さは演奏姿勢とペダルの踏み心地を左右するため、地味ながら音にも影響する要素です。

各パートの「音」を知るとマイキングが見えてくる

各パートの名称と音域がわかると、ドラム収録のマイク選びとマイキングの考え方が見えてきます。要点は、低域のキックと中域のスネア・タムには近接で頑丈なダイナミックマイクを、高域のシンバル群にはオーバーヘッドで全体像を、という役割分担です。

パートごとの音域帯を一望する

おおまかな目安として、バスドラムが最低域(20Hz前後〜)、フロアタムがその上、スネアやタムが中域(おおよそ100Hz〜数百Hzの基音+2〜5kHzのアタック)、シンバル類が高域の倍音帯を受け持ちます。各パートが帯域上ですみ分けているからこそ、複数の太鼓を同時に鳴らしても音が団子にならずに聞き分けられるわけです。この帯域のすみ分けは、ミキシングでEQ(Equalizer、イコライザー)を扱う際の基礎にもなります。

図:ドラム各パートの代表的な音域帯(対数・20Hz〜16kHz)
20Hz100Hz1kHz5kHz16kHzバスドラムフロアタムタム(ロー/ハイ)スネアハイハット/クラッシュ/ライド
目安:バスドラムが最低域の土台、フロアタム〜タムがその上、スネアは胴鳴り(約200〜400Hz)+アタック(約2〜5kHz)、シンバル類が高域を受け持ち、帯域上ですみ分けます。

マルチマイク収録の基本と定番マイク

ドラムの本格的な収録は、複数のマイクを同時に立てる「マルチマイク」が基本です。キックには専用設計のダイナミックマイク、スネアやタムには中域に強いダイナミックマイク、そしてシンバルとセット全体の空気感を拾うために、セットの上方へオーバーヘッドマイクを左右1本ずつ立ててステレオで録るのが定番の組み立てです。

編集部が立ち会った収録でも、まずオーバーヘッドでセット全体の鳴りを作り、そこへキック・スネア・タムの近接マイクを足してバランスを整える、という順序が多く見られました。どのマイクをどこに使うかは、本記事で見た「各パートの音域と役割」を理解しているほど判断が速くなります。スネアやタムの定番として使われるダイナミックマイクの選び方は、ダイナミックマイクのおすすめ機種もあわせてご覧ください。

ドラムセットの名称に関するよくある質問(FAQ)

Q. 5点セットの「点」は何を数えていますか。 シンバルを除いた太鼓(ドラム)の数を数えます。5点セットはバスドラム・スネア・ハイタム・ロータム・フロアタムの5つです。ハイハットやクラッシュ、ライドなどのシンバルは点数に含めないのが一般的です。

Q. スネアドラムとタムはどう違うのですか。 スネアは裏面のスナッピー(響き線)によって「パンッ」という鋭い音が出るのが最大の違いです。タムにはスナッピーがなく、口径に応じた音程の太鼓としてフィルインなどに使われます。役割も、スネアはバックビート、タムは音程変化の演出が中心です。

まとめ:名称は「音を録るための地図」になる

ドラムセットの基本は「5点セット」、すなわちバスドラム・スネア・ハイタム・ロータム・フロアタムの5つの太鼓に、ハイハットとクラッシュ/ライドのシンバルを加えた構成です。名称と配置を覚えたら、次は各パートが受け持つ音域(キックの低域、スネア・タムの中域、シンバルの高域)に目を向けると、ドラム収録のマイク選びとマイキングの考え方が自然に見えてきます。名称は単なる暗記ではなく、音を録るための地図として役立ちます。

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