インイヤーモニター(イヤモニ)とは|仕組みとライブ・配信での使い方を解説

2026.06.06
配信・録音機材

インイヤーモニター(イヤモニ/IEM=In-Ear Monitor、イン・イヤー・モニター)とは、演奏者やパフォーマーが耳に装着し、自分の声・楽器・同期音など「モニターしたい音だけ」を正確に聴くための機材です。

インイヤーモニター(イヤモニ用イヤホン)
インイヤーモニター(イヤモニ用イヤホン)

ステージのモニターを足元のスピーカーからイヤモニへ切り替えたい、配信の自己モニターを安定させたい。そう考えていませんか。結論から言えば、ステージを動きながら一定の返しを聴きたい場合や、ハウリングと反響を避けたい場合にイヤモニは有利で、用途と予算しだいで有線とワイヤレス、ユニバーサルとカスタムを選び分けるのが基本です。

本記事では、Sound Picks編集部が現場で得た視点をもとに、イヤモニの定義とフロアモニターとの違い、信号の流れと有線・ワイヤレスの仕組み、ユニバーサル型とカスタムIEMの違い、ドライバ構成、ライブ・配信での使い方、ワイヤレス運用での電波の注意、そして選び方の入口までを順に整理します。

INDEX目次

インイヤーモニター(イヤモニ)とは|1文定義とフロアモニターとの違い

インイヤーモニターとは、耳に直接装着して、自分が聴きたい音だけを手元のミックスで聴くための小型のモニター機材です。ライブでの自分の返し、配信での自己確認、放送での指示の受け取りなど、聴く対象を絞り込めるのが特徴です。

イヤモニの1文定義

イヤモニは、演奏や進行に必要な音を耳元で正確に届けるためのモニター手段です。会場全体へ音を届けるPA(Public Address、パブリック・アドレス)とは役割が異なり、イヤモニは「その人が聴くための音」を担います。

フロアモニター(転がし)との違い

フロアモニターとは、演者の足元に置いて返しを聴くためのスピーカーで、現場では「転がし」とも呼ばれます。フロアモニターは設置が手軽な一方、会場での反響、マイクとの間で起きるハウリング、演者が動くと聞こえ方が変わるという課題があります。イヤモニは耳元で音が一定に保たれ、ステージを動いても返しが変わりにくく、ハウリングが起きにくいという違いがあります。

編集部が小規模ライブハウスでPAを手伝った際も、転がしの返しを詰める作業に多くの時間を取られました。後日その演者がイヤモニを導入したところ、立ち位置を変えても本人のミックスが安定し、リハーサルの確認が短く済んだのが印象的でした。

「IEM」という呼称

イヤモニは英語の In-Ear Monitor を略して「IEM」とも表記されます。製品カタログや現場では「イヤモニ」「IEM」「インイヤー」が同じ意味で使われます。

イヤモニの仕組み|信号の流れと有線・ワイヤレスの2種類

イヤモニの仕組みは、ミキサーで作った「その人専用の返し(モニターミックス)」を、有線またはワイヤレスでイヤホンへ届けるという流れで成り立っています。接続の方式には、ケーブルで直接つなぐ有線IEMと、電波で飛ばすワイヤレスIEMシステムの2種類があります。

図1:イヤモニの信号の流れ(ミキサーで作った返しを有線/ワイヤレスでイヤホンへ)
マイク/楽器/同期音
声・生音・クリック
ミキサー
モニターミックス作成
演者ごとの返し
有線 or 送信機→受信機
ケーブル/電波+ボディパック
イヤモニ(イヤホン)
耳元で聴く
ミキサーで作った「その人専用の返し」を、有線IEM(ケーブル直結)またはワイヤレスIEMシステム(送信機→電波→受信機ボディパック)でイヤホンへ届けます。

信号の流れ:演奏/同期音 → ミキサー → モニターミックス → イヤモニ

信号は「マイク・楽器・同期音 → ミキサー → モニターミックス → イヤモニ」という流れで進みます。モニターミックスとは、演者ごとに必要な音だけを最適なバランスでまとめた返しの音のことです。ボーカルには自分の声を多め、ドラマーにはクリック(テンポを示す音)を多めにするなど、人によって中身が変わります。

有線IEMの仕組み

有線IEMは、ミキサーのヘッドホン出力や小型のヘッドホンアンプ(ボディパック型を含む)から、ケーブルでイヤホンへ直接音を送る方式です。電波を使わないため接続が安定し、遅延が極めて小さく、コストを抑えやすいのが利点です。一方でケーブルの長さの範囲でしか動けないため、立ち位置が大きく変わらない用途や、宅録・配信での自己モニターに向いています。

ワイヤレスIEMシステムの仕組み(送信機+受信機ボディパック)

ワイヤレスIEMシステムは、送信機(トランスミッター)と受信機(ボディパック)の組み合わせで構成されます。ミキサーから送られたモニターミックスを送信機が電波として飛ばし、演者が腰などに装着した受信機(ボディパック)が受け取って、イヤホンへ音を届けます。ボディパックとは、身につけて使う小型の受信機のことです。ステージを自由に動けるのが最大の利点で、ライブの定番の構成と言えます。その分、電波・電池・周波数帯の管理という運用が増えます。

表1:有線IEM と ワイヤレスIEMシステム の比較
観点 有線IEM ワイヤレスIEMシステム
構成ヘッドホン出力/ボディパック型アンプ+ケーブル送信機+受信機(ボディパック)
可動域ケーブル長の範囲電波の届く範囲で自由に移動
安定性・遅延安定・遅延は極小電波環境に依存
運用負荷低い電池・周波数帯・混信の管理が必要
向く用途配信・宅録・立ち位置が一定動き回るライブ

ユニバーサル型とカスタムIEMの違い|形状とドライバ構成

イヤモニのもう一つの軸は、イヤホン本体の形状です。耳の形を問わず使える既製品のユニバーサル型と、自分の耳型に合わせて作るカスタムIEMがあります。どちらが上というものではなく、共用するか専用にするか、遮音や装着の安定をどこまで求めるかで選び分けます。

ユニバーサル型(既製品)

ユニバーサル型とは、誰の耳にも合うように設計された既製品のイヤモニです。付属のイヤーピースを交換してフィットを調整します。導入が手軽で、複数人で共用しやすく、買ってすぐ使えるのが利点です。フィットや遮音はイヤーピースの選択に左右されます。

カスタムIEM(耳型オーダーメイド)

カスタムIEMとは、自分の耳型を採取し、その形に合わせてシェル(本体)をオーダーメイドで作るイヤモニです。耳にぴたりと収まるため遮音性と装着の安定性が高く、長時間でも外れにくいのが利点です。一方で、個人専用となるため共用ができず、製作に納期がかかり、価格は高めになりやすく、オーダーメイドのため返品は受け付けられないのが一般的です。

表2:ユニバーサル型 と カスタムIEM の比較
観点 ユニバーサル型 カスタムIEM
形状既製品・イヤーピースで調整耳型オーダーメイド
遮音・装着安定イヤーピース次第高い
共用しやすい個人専用(不可)
納期・価格・返品すぐ使える/返品は店舗規定納期あり・高め・返品不可が一般的

ドライバ構成:BA/ダイナミック/ハイブリッド

ドライバとは、電気信号を音に変える発音部のことです。イヤモニのドライバ構成は主に3種類に分かれます。複数のBAを搭載した多ドライバ構成もあります。どの方式が優れているという話ではなく、求める音の傾向で選ぶのが基本です。

表3:イヤモニの主なドライバ構成
方式 構造 音の傾向
ダイナミック型(DD)振動板をコイルで動かす低音の量感・音圧を出しやすい
BA型(バランスドアーマチュア)小型の電磁駆動ユニット中高域の解像感に強い
ハイブリッド型ダイナミック+BAの組合せ低音と中高域を両立しやすい

ライブ・配信でのイヤモニの使い方

イヤモニの使い方は、用途によって設計が変わります。共通するのは「その人が聴くべき音を、聴きやすい音量とバランスで届ける」という考え方です。ライブでは演者ごとのモニターミックス作り、配信では自己モニター、いずれも遮音による外音の遮断をどう扱うかが鍵になります。

ライブPAでの使い方(モニターミックスを作る)

ライブでは、演者ごとにモニターミックスを用意します。ボーカルは自分の声とリズムを中心に、各楽器奏者は自分のパートと全体感を中心に、といった具合に中身を変えます。同期演奏を行う場合はクリックや同期音もモニターへ送ります。イヤモニは外の音を遮断するため、客席の歓声や会場の空気が聞こえにくくなります。これを補うために、客席の音を拾うアンビエンスマイクを返しに混ぜる運用が定番です。

配信・宅録での使い方(自己モニター)

配信や宅録では、自分の声やBGM、進行に必要な音を確認するための自己モニターとしてイヤモニを使います。有線IEMをオーディオインターフェースやミキサーのヘッドホン出力につなぐ構成が手軽で、遅延も小さく扱いやすいのが実情です。

遮音と安全:聴覚保護・周囲の音の確保

イヤモニは遮音性が高いため、装着すると周囲の音が聞こえにくくなります。これはモニターの安定という利点である一方、ステージ上での転倒や接触、スタッフからの声かけといった安全に関わる音まで遮ってしまう側面があります。音量を上げすぎないこと、必要に応じてアンビエンスマイクで周囲の音を取り込むことが、聴覚保護と安全の両面で重要です。編集部の経験でも、イヤモニ導入時にまず決めるのは音量の上限とアンビエンスの量でした。

ワイヤレスイヤモニの運用注意|電波(特定ラジオマイク)と周波数帯

ワイヤレスIEMシステムは電波を使うため、日本では電波に関するルールの理解が欠かせません。ワイヤレスマイクやワイヤレスIEMは「特定ラジオマイク」と呼ばれる無線設備に該当する場合があり、使う周波数帯によって免許の要否や運用のルールが異なります。

図:ワイヤレスIEMシステムの構成(送信機→無線→受信機→イヤホン)
ミキサー
モニター送り(返し)
送信機
トランスミッター
据置・ラック設置
無線(電波)
受信機
ボディパック
演者が身につける
イヤホン
耳元で返しを聴く
ワイヤレス:送信機→電波→受信機(ボディパック)。演者が動ける反面、電波の干渉・チャンネル管理が必要。
有線:ミキサーからケーブルで直接イヤホンへ。電波の心配がなく安定するが、可動範囲はケーブル長に制限される。
オレンジの矢印は信号の流れ。受信機(ボディパック)と送信機の間だけが無線区間です。

ワイヤレスIEMと電波の扱い

ワイヤレスIEMは送信機から受信機へ電波で音を送ります。同じ会場で複数のワイヤレス機器(マイク・イヤモニ)を使うと、電波どうしが干渉する可能性があります。そのため、使用するチャンネル(周波数)を事前に割り当てるチャンネルプランニングが運用の基本になります。

周波数帯と免許の考え方(日本)

日本では、従来の特定ラジオマイク用途で使われていたA帯(770〜806MHz)が、周波数の再編により2019年3月末までで使用期限を迎え、2019年4月以降は特定ラジオマイクとして使用できなくなり、ホワイトスペース帯(470〜710MHz)などへ移行しました。ホワイトスペース帯とは、地上デジタルテレビ放送の空きチャンネルを利用する帯域のことです。一方で、免許を要しないB帯のワイヤレスシステムも流通しています。使う帯域によって免許の要否や運用条件が変わるため、導入時は対応帯域と運用ルールをあらかじめ確認しておきましょう。

現場での混信対策の基本

混信対策の基本は、使用チャンネル数を必要最小限にし、各機器のチャンネルを重ならないよう割り当てることです。ホワイトスペース帯は地上デジタルテレビ放送と帯域を共用するため、近距離で多くの送信機を同時に使うと、使えるチャンネル数に上限が生じます。大規模な現場では、ワイヤレスのコーディネートを専門に行う体制が組まれることもあります。

イヤモニの選び方の入口とよくある質問(FAQ)

イヤモニ選びは、細かいスペックから入るより、用途の整理から始めると迷いにくくなります。ここでは選び方の入口と、よくある質問をまとめます。

選び方の考え方(用途別の入口)

イヤモニ選びの3ステップ
1動くか動かないか:ステージを動くならワイヤレスIEMシステム、立ち位置が一定・配信中心なら有線IEM。
2共用か専用か:手軽さ・共用ならユニバーサル型、遮音と装着の安定ならカスタムIEM。
3音の傾向:低音の量感ならダイナミック、中高域の解像ならBA、両立ならハイブリッド。

そのうえで、具体的な機種は対応帯域・装着感・予算で絞り込みます。価格は変動するため、実勢価格は各販売店でご確認ください(2026年6月時点の考え方)。

よくある質問(FAQ)

Q. 有線とワイヤレス、どちらがいいですか?
動き回る必要があればワイヤレス、安定とコスト重視・配信中心なら有線が向いています。
Q. カスタムIEMは必要ですか?
遮音と装着の安定を強く求める場合に向きます。まずはユニバーサル型から始める選び方も成立します。
Q. 耳は痛くなりませんか?
フィットが合っていないと痛みや疲れが出やすくなります。ユニバーサル型はイヤーピースの選択、カスタムIEMは耳型の精度がポイントです。
Q. 配信にも使えますか?
使えます。有線IEMをオーディオインターフェースやミキサーのヘッドホン出力につなぐ構成が手軽です。
Q. 遮音で周りが聞こえず危なくないですか?
高い遮音は安全面の死角になり得ます。音量を上げすぎない運用と、必要に応じたアンビエンスマイクの併用で補います。

まとめ|イヤモニは「2軸」で理解すると選びやすい

インイヤーモニター(イヤモニ/IEM)とは、耳に装着してモニターしたい音だけを正確に聴くための機材です。理解の軸は2つあります。1つは接続方式(有線IEM/ワイヤレスIEMシステム=送信機+受信機ボディパック)、もう1つは形状(ユニバーサル型/カスタムIEM)です。音の傾向はドライバ構成(ダイナミック/BA/ハイブリッド)で決まります。

ライブで動くならワイヤレス、配信や立ち位置が一定なら有線が向きます。手軽に始めるならユニバーサル型、遮音と装着の安定を求めるならカスタムIEMが選択肢に入ります。いずれも遮音が高いぶん、音量を上げすぎない運用と周囲の音の確保が安全のうえで大切です。ワイヤレスを使う場合は、対応する周波数帯と免許・運用ルールを事前に確認しておきましょう。用途を整理してから具体的な機種を選べば、迷いは小さくなります。価格や在庫は変動するため、実勢価格は各販売店でご確認ください。

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