パワードスピーカーのおすすめ|PA・モニター・簡易ライブ別の決定版

2026.06.29
コラム・基礎知識

小規模ライブのPAを任されたとき、最初に悩むのが「どのスピーカーを買うか」です。アンプ別置きのパッシブ運用は手堅い反面、機材一式で7〜8点に増え、トラブル時の切り分けにも時間がかかります。

結論として、可搬・小〜中規模PA・宅録モニター・路上ライブの大半は、パワードスピーカー(アンプ内蔵スピーカー)を選ぶのが現実解です。電源とXLR1本で鳴り、各メーカーがアンプ容量とDSPを最適化した状態で出荷されているため、運用が一気にシンプルになります。

本記事では、パワードスピーカーの基本/パッシブとの違い/用途別の選び方/PA・簡易ライブ・モニター向けの定番モデルを公式スペックベースで横並びに整理しました。Sound Picks 編集部が現場で触ってきた経験も交えて、購入判断に必要な情報をひと通り押さえます。

INDEX目次

パワードスピーカーとは|アンプ内蔵スピーカーの基本

パワードスピーカーとは、スピーカー本体にパワーアンプとDSP(信号処理)を内蔵し、ミキサーやプレーヤーからの信号を直接受けて鳴らせるスピーカーのことです。 アクティブスピーカーとも呼ばれ、海外メーカーは Powered/Active を併用しています。パワーアンプを別途用意するパッシブ運用に比べ、設置・運搬・トラブル切り分けがシンプルになるため、近年のライブPA・モニタリング・配信現場の主流になっています。

図:パワードスピーカー vs パッシブスピーカーの接続図
パワード(アンプ内蔵)
ミキサー
→XLR→
スピーカー
(アンプ内蔵)
+電源コンセント1本
ケーブル2本/設置簡単/可搬向き
パッシブ(アンプ別置き)
ミキサー
→XLR→
パワーアンプ
→スピーコン→
スピーカー
+電源(アンプ側)/スピーコン
機材点数多/系統設計の自由度高/大規模・固定向き

パワードスピーカーとアクティブスピーカーの呼び分け

パワードとアクティブはほぼ同義です。アンプ内蔵のスピーカー全般を指す呼称で、機能的な区別はありません。YAMAHA・JBL・QSC・Electro-Voice などの海外メーカーは Powered/Active を併用し、Bose や Roland は Powered を用いるケースが多く見られます。

日本国内のPA現場では「パワード」「アクティブ」のいずれも通じます。ただし「アクティブ」はノイズキャンセル系のヘッドホン製品でも使われる単語のため、業務用スピーカーの文脈では「パワードスピーカー」と書いたほうが誤解が少ない、というのが実情です。

パッシブスピーカー+アンプ運用との違い

パッシブスピーカーは本体にアンプを内蔵しないタイプで、別途パワーアンプを必要とします。1台のアンプから複数本のスピーカーを並列/直列で鳴らせるため、固定設備で大規模・大出力かつ複数系統を組む現場では今もパッシブが主流です。

一方で可搬・小〜中規模の用途では、ケーブルが電源とXLRの2本で済むパワードのほうが運用負荷が小さく、各メーカーがアンプとスピーカーをマッチング済みで出荷しているぶん即戦力の音作りになりやすいのが実情です。「設置の手間と運用の柔軟性のどちらを優先するか」が判断軸になります。

パワードとパッシブの違い|どちらを選ぶべきか

パワードとパッシブのどちらを選ぶかは、運用規模と固定/可搬の用途で決まります。 可搬・小〜中規模のライブPAや配信、宅録モニターはパワード優位、固定設備で大規模・大出力かつ複数本を1系統で鳴らす用途はパッシブ+外部アンプが有利です。電源の取り回しと、アンプ/スピーカーを別々に更新できる柔軟性も判断材料になります。

図:パワード/パッシブの使い分けマトリックス(可搬性 × 規模)
小〜中規模
大規模
可搬
パワード優位
小〜中規模PA
路上ライブ
配信・拡声
パッシブ+外部アンプ
可搬大規模イベント
仮設PA
固定
パワード優位
宅録モニター
会議室拡声
店舗BGM
パッシブ+外部アンプ
ホール常設PA
ライブハウス据置
可搬・小〜中規模はパワード/大規模・複数系統はパッシブが基本

パワードのメリット・デメリット

パワードの最大のメリットは、機材点数と配線の少なさです。電源コンセントとXLR1本で鳴るため、リハーサルの段取りが速く、トラブル時にスピーカー単位で原因切り分けができます。各メーカーがアンプとスピーカーのチューニングを最適化済みで出荷しているため、出力に対する音圧バランスも整っています。

デメリットは、各スピーカーに電源コンセントが必要な点と、アンプとスピーカーを別々に更新できない点です。スタンドにマウントすると重量が増えるため、12〜15インチクラスでは設置作業に2人以上必要な場面が出てきます。アンプ部の故障時はスピーカーごと修理に出すことになります。

パッシブが優位になる現場

固定設備で複数本のスピーカーを1系統で鳴らす場合や、外部のアンプラックでEQ・ディレイ・リミッターを統合管理したい場合は、パッシブ+外部アンプが優位です。コンサートホールやライブハウスの常設PAでは、機械室にアンプをまとめて熱・ノイズ源を客席から離す運用が一般的で、この目的にはパッシブが向いています。

また、長尺ケーブルが必要な現場でもパッシブが選択肢に入ります。XLRのライン信号は数十メートル引き回しても劣化が少ないですが、パワードはその先に電源コンセントが必要になるため、屋外イベントの仮設電源計画とセットで考える必要が出てきます。

迷ったときの判断フロー

判断に迷ったら、まず「同じ場所に常設するか/毎回バラして運ぶか」で分岐します。常設なら系統数・出力規模を見てパッシブ+外部アンプを検討、可搬ならパワードを第一候補にします。次に「1人で運用するか/2人以上で運用するか」で重量上限を決め、最後にスピーカーの口径(10〜15インチ)と最大SPLで具体モデルに落とし込みます。

Sound Picks 編集部が小規模ライブハウスのPAヘルプに入った際も、可搬パワード2台+ミキサー1台の最小構成で本番を回せています。機材を増やさないこと自体が、当日の事故率を下げる現場のノウハウです。

用途別の選び方|PA・モニター・簡易ライブ・路上ライブ

パワードスピーカーは「どの現場で使うか」で必要なスペック軸が変わります。 小〜中規模PAは最大SPLと出力W、宅録モニターは周波数特性のフラットさとHF/LFサイズ、簡易ライブ・路上ライブは内蔵バッテリーとミキサー機能、屋外配信はBluetoothと耐久性。用途を先に決めることで、製品ごとの優劣ではなくフィット感で選べるようになります。

ステージ照明に輝くパワードスピーカーおすすめの接写

小〜中規模PA:最大SPLと出力Wで選ぶ

50〜200人規模のライブPA・拡声では、最大SPL 127〜134dB・出力W 1,000〜2,000W(ピーク)クラスが定番です。具体的にはYAMAHA DBR/DXR、JBL EON、Electro-Voice ZLX G2/EKX、QSC K.2/CPシリーズが候補に入ります。客席の人数とPA位置からの距離を見て、12インチ(10〜15kg前後)か15インチ(15〜20kg前後)かを決めるのが基本の選び方です。

メイン2本+モニター2本の4本構成で組む場合、同シリーズで揃えると音色の整合性が取りやすく、DSPプリセット(メイン用/モニター用)も共通化できます。各社の Front of House/Floor Monitor プリセットは公式の取説に記載があるため、現場ごとに使い分けます。

宅録・スタジオモニター:周波数特性の素直さで選ぶ

宅録・スタジオでミックス判断に使う「モニター用」パワードスピーカーは、最大音量よりも周波数特性のフラットさと位相の素直さを優先します。代表モデルはYAMAHA HS5/HS8、KRK Rokit、IK Multimedia iLoud Micro Monitor。HS5は周波数特性 54Hz〜30kHz(−10dB)/70W、HS8は 38Hz〜30kHz(−10dB)/120W という公式値で、宅録の標準機としてプロからアマチュアまで採用が広い1台です。

PA用と違って大音量は出ません。HS8でも 120W のバイアンプ構成で、ニアフィールド用途(机から60〜120cm程度の距離)に最適化されています。「ミックスの判断が崩れない音」が目的のため、最大SPL値で比べる意味は薄いのがモニター選びの注意点です。

簡易ライブ・路上ライブ:内蔵バッテリーとミキサーで選ぶ

路上ライブ・小規模イベント・移動拡声では、内蔵バッテリーとミキサー機能を備えた一体型パワードが現実解です。Bose S1 Pro+、Roland CUBE Street EX、JBL EON ONE Compactが代表モデルになります。

電源コンセントが取れない屋外でも、Bose S1 Pro+ は最大11時間、JBL EON ONE Compact は最大12時間、Roland CUBE Street EX は出力モード切替で最大20時間(Ecoモード10W時)の連続駆動が可能です。アコースティックギター/ボーカルマイク/プレーヤーを直挿しできるチャンネル数と、ミキサーを別途持ち運ぶ必要のなさが、路上運用での圧倒的な強みになります。

PA・ライブ向けおすすめパワードスピーカー|公式スペック横並び

小〜中規模のライブPA・拡声で定番となっているのは、YAMAHA DBR/DXRシリーズ、Electro-Voice ZLX G2/EKXシリーズ、JBL EON700シリーズ、QSC K.2シリーズです。 いずれも各社が公式に最大SPL・出力W・周波数特性を公表しており、横並びで比較できます。本節では12〜15インチクラスを中心に、各社の代表モデルを公式値ベースでまとめます。

表:PA・ライブ向けパワードスピーカー6モデル スペック比較
モデル 口径 最大SPL 出力W(ピーク) 周波数特性 出典
YAMAHA DBR12 12″ 131 dB 1,000 W 52Hz-20kHz YAMAHA USA 公式
YAMAHA DBR15 15″ 132 dB 1,000 W 48Hz-20kHz YAMAHA USA 公式
YAMAHA DXR12 mkII 12″ 134 dB 1,100 W 52Hz-20kHz YAMAHA USA 公式
EV ZLX-12P G2 12″ 127 dB 1,000 W 52Hz-20kHz Electro-Voice 公式
JBL EON712 12″ 127 dB 1,300 W 50Hz-20kHz JBL Professional 公式
QSC K12.2 12″ 132 dB 2,000 W 50Hz-20kHz QSC Audio 公式
※ 各社公式仕様書(2026年6月確認)。価格・在庫は変動するため、購入時は販売店および公式サイトで最新情報を確認してください。

OTAIRECORD のオタレコTVチャンネル(『【スピーカーサイズの選び方】Electro-Voice ZLX G2シリーズで検証します!パワード編』)でも、12インチと15インチの実音圧差・低域の伸びを実機検証で比較しており、口径選定の参考にできます。Sound Picks 編集部としても、メインPAで「客席後方まで届けたい」場合は15インチ、ステージモニター用途は12インチを基準にしています。

YAMAHA DBR/DXRシリーズ

YAMAHA の DBR シリーズは、最大SPL 131dB(DBR12)/132dB(DBR15)、ピーク出力 1,000W という公式値で、入門〜中堅クラスの定番として広く採用されています。DXR mkII シリーズはその上位機で、DXR12 mkII/DXR15 mkII ともに最大SPL 134dB、ピーク出力 1,100W、連続出力 700W(LF 600W+HF 100W) という値です。

DBRと DXR mkIIの差は主に最大SPL(131〜132dB vs 134dB)と内蔵DSPの細かさです。客席100人以下の小規模なら DBR で十分鳴り、150人を超える規模や屋外の場合は DXR mkII にステップアップする、というのが現場の使い分けになります。スピーカー価格は変動が大きいため、現在価格はYAMAHA USA 公式仕様ページと販売店で確認をおすすめします。

Electro-Voice ZLX G2シリーズ

Electro-Voice の ZLX G2 シリーズは、ZLX-12P-G2 が最大SPL 127dB/ピーク出力 1,000W、ZLX-15P-G2 が最大SPL 129dB/ピーク出力 1,000W という公式値です。Class-Dアンプに4chデジタルミキサーを内蔵し、Dynacord 由来のDSPプリセットを搭載しています。

DSPプリセットには Music/Live/Speech/Club/DJ/Floor Monitor といった用途別の音作りが用意されており、現場で「メインかモニターか」を切り替えて使えるのが運用上のメリットです。EKXシリーズは ZLX の上位機で、より高い最大SPLと耐入力を備えます。詳細はElectro-Voice 公式 ZLX G2 ページで確認できます。

JBL EONシリーズ

JBL の EON700 シリーズ(EON710/712/715)は、EON712 が最大SPL 127dB/ピーク出力 1,300W/周波数特性 50Hz〜20kHz(−10dB)、EON715 が最大SPL 128dB/ピーク出力 1,300W/周波数特性 45Hz〜20kHz(−10dB) という公式値です。Class-Dアンプと専用設計のウェーブガイド、Bluetooth 5.0 接続を備え、Lexicon/dbx 由来のDSPを搭載しています。

EON ONE Compactとの混同に注意が必要ですが、EON712/715は「常設・据置・客席向け」のメインPA用途、EON ONE Compactは「可搬・バッテリー駆動・路上向け」の小型機です。スペックはJBL Professional EON715 公式ページで確認できます。

QSC K.2/CPシリーズ

QSC の K.2 シリーズは、K10.2 が最大SPL 130dB/ピーク出力 2,000W/周波数特性 56Hz〜20kHz、K12.2 が最大SPL 132dB(連続126dB)/ピーク出力 2,000W/周波数特性 50Hz〜20kHz(−6dB) という公式値です。同クラスでは最大級のピーク出力と、DMT(Directivity Matched Transition)設計による広い指向特性が特徴になっています。

CPシリーズはK.2より価格を抑えた廉価ラインで、同じQSC品質を低価格帯で導入したい現場に選ばれています。詳細はQSC Audio K12.2 公式ページで確認できます。

簡易ライブ・路上ライブ向けおすすめ|内蔵バッテリーモデル

路上ライブ・小規模イベント・移動拡声では、内蔵バッテリーとミキサー機能を備えた一体型パワードが現実解です。 Bose S1 Pro+、Roland CUBE Street EX、JBL EON ONE Compactは、いずれもアコギ/マイク/プレーヤーを直接挿せるチャンネル数と、屋外運用に耐える可搬性を持っています。

表:バッテリー駆動パワードスピーカー3モデル スペック比較
モデル 出力W 最大SPL 重量 連続駆動時間 入力構成 出典
Bose S1 Pro+ 非公表 109 dB 約 6.5 kg 最大11時間 XLR/TRSコンボ×2
3.5mm AUX
Bluetooth
Bose 公式
Roland CUBE Street EX 50 W
(25W×2)
非公表 7.4 kg 最大20時間
(Eco 10W時)
XLR/TRSコンボ×2
1/4インチライン
3.5mm AUX
Roland 公式
JBL EON ONE Compact 非公表 112 dB 約 8 kg 最大12時間 XLR/TRSコンボ×2
1/4インチHi-Z
3.5mm AUX
JBL Professional 公式
※ 各社公式仕様書(2026年6月確認)。Bose S1 Pro+ と JBL EON ONE Compact は出力Wを公表せず最大SPLで仕様提示。CUBE Street EX はステレオ構成で1台完結します。

JBL のパワードスピーカー紹介動画(LANDSチャンネル『JBL話題の新製品 安くて機能満載なパワードスピーカー IRX108BT-Y3』)でも語られているとおり、近年は「ミキサー機能+Bluetooth+軽量」を一体化したモデルが各社から出ており、路上ライブ・小規模イベントでの選択肢が大きく広がっています。

Bose S1 Pro+

Bose S1 Pro+ は、最大出力ピーク 109dB SPL、本体重量 約6.5kg、連続駆動時間 最大11時間(充電式リチウムイオン電池) という公式値です。入力は XLR/TRSコンボジャック2基、3.5mm AUX、Bluetoothストリーミングを備えます。

最大の特徴は、本体を縦置き/横置き(フロアモニター)/傾斜置き/スピーカースタンドの4方向に設置できる「マルチポジション機能」です。S1の前モデルからのアップデートで Bluetooth がワイヤレスマイク用途にも対応し、屋外でのストリート演奏で現実的な選択肢になりました。詳細はBose 公式 S1 Pro+ ページで確認できます。

Roland CUBE Street EX

Roland CUBE Street EX は、最大出力 50W(Max モード時5時間/Normal モード25W時10時間/Eco モード10W時20時間)、重量 7.4kg、内蔵スピーカー 8インチウーファー×2+2インチツイーター×2のステレオ構成 という公式値です。XLR/TRSコンボ入力を備えた4chミキサー機能を内蔵し、マイクと楽器を同時に通せます。

ステレオ構成のため、CUBE Street EX を2台用意するのではなく1台でステレオ再生が完結する点が、路上の即セッティング性で大きな違いです。出力モード切替で電池持ちを劇的に伸ばせる点も、屋外イベント運用での実用性に直結します。詳細はRoland 公式 CUBE Street EX ページで確認できます。

JBL EON ONE Compact

JBL EON ONE Compact は、最大SPL 112dB、本体重量 約8kg(17.6ポンド)、連続駆動時間 最大12時間、周波数特性 37.5Hz〜20kHz という公式値です。XLR/TRSコンボ2基、1/4インチハイインピーダンスのギター入力、3.5mm AUX入力の計4チャンネル構成で、phantom 電源・Lexicon/dbx エフェクトも内蔵しています。

37.5Hz〜の周波数特性は同クラスでは突出した低域再生力で、ベースやキックを含む弾き語り+トラック流しの用途に強いのが実情です。USB 3.0 ポートを2基備え、スマホやタブレットへの高速充電も同時にこなせるのは路上運用での隠れた便利機能です。詳細はJBL Professional EON ONE Compact 公式ページで確認できます。

モニタースピーカー向けパワード|宅録・スタジオ用途の概観

宅録・スタジオで使う「モニター用」パワードスピーカーは、PA用とは選定軸が異なります。 求められるのは大音量ではなく、ミックスの判断が崩れない周波数特性のフラットさと位相の素直さです。代表モデルとして YAMAHA HS5/HS8、KRK Rokit、IK Multimedia iLoud Micro Monitor が挙げられます。本節では概観のみとし、詳しいモニター選びは別記事に譲ります。

YAMAHA HS5/HS8

YAMAHA HS シリーズは、HS5 が周波数特性 54Hz〜30kHz(−10dB)/総出力 70W(LF 45W+HF 25W)/5インチコーンウーファー、HS8 が周波数特性 38Hz〜30kHz(−10dB)/総出力 120W(LF 75W+HF 45W)/8インチコーンウーファー という公式値です。バイアンプ構成のニアフィールドモニターで、宅録の標準機として国内外で広く採用されています。

価格と性能のバランスが良く、HS5は「机から60〜120cm程度の距離で使うニアフィールド」、HS8は「やや距離を取ってミックス判断に使うミッドフィールド寄り」の用途で使い分けるのが現場の定番です。詳細はYAMAHA HS シリーズ公式仕様ページで確認できます。

KRK Rokitシリーズ

KRK Rokit シリーズは、5〜10インチのラインナップを揃えるニアフィールドモニターで、専用アプリで部屋特性に応じた25種類のグラフィックEQプリセットを呼び出せます。低域がやや強調されたチューニングで、EDM/ヒップホップ系のミックスで好まれる傾向が見られます。

IK Multimedia iLoud Micro Monitor

iLoud Micro Monitor は、世界最小級の3.5インチコーンウーファー+3/4インチツイーター構成で、設置スペースの限られた宅録環境向けの選択肢です。Bluetooth入力にも対応し、サブ機・モバイル用途・小型デスク用途で需要があります。モニター選定の詳細は別記事で個別に深掘りしますので、本記事では概観に留めます。

パワードスピーカー選びで失敗しないチェックポイント

メーカーや型番より先に押さえるべきは、現場で使い切れる出力/SPLか、必要な入力チャンネル数があるか、運搬可能な重量か、内蔵DSPやプリセットが用途に合うか、です。 スペックシートの「最大SPL」「最大出力W」「周波数特性」「入力」「重量」を、自分の現場の条件と突き合わせて選ぶのが、購入後の後悔を防ぐいちばんの近道になります。

図:パワードスピーカー購入前チェックリスト6項目
購入前に6項目すべてチェックすれば、買ってから「現場で足りなかった/重すぎた」の後悔を最小化できます。

最大SPL・出力Wの目安

最大SPL(Sound Pressure Level、音圧レベル)は、スピーカーが出せる最大音量の目安です。50人規模の屋内なら120dB前後で十分、150人規模なら128dB前後、200人を超える規模なら132dB以上を目安に選びます。屋外イベントは音が拡散して減衰しやすいため、屋内と同じ規模感でも+3〜6dBの余裕を見込むのが現場の経験則です。

出力W(ピーク値)は、メーカー間で測定条件が違うこともあるため、最大SPLとセットで見るのが鉄則です。出力Wだけで「2,000W>1,300W」と単純比較すると判断を誤ります。同口径・同価格帯のモデルを比べるときも、まず最大SPLで横並びにし、次に周波数特性の下限を確認するのが効率的な選び方です。

入力数・Bluetooth・DSPの有無

PA本来の用途では、ミキサーから1系統を受けるだけなら入力は XLR 1つで足ります。一方、ミキサーを使わない小規模運用や路上ライブでは、本体内蔵ミキサーのチャンネル数(マイク2+楽器1+AUX1 など)が選択の決め手になります。phantom 電源対応・ハイインピーダンス入力対応の有無も、コンデンサーマイクやエレキ直挿しの可否に直結します。

Bluetooth対応は、屋外配信・カラオケ・BGM再生で便利な機能です。DSPプリセット(メイン用/モニター用/DJ用 など)は、各メーカーの取説で必ず確認します。プリセット切替で同じスピーカーをメインPAにもステージモニターにも使い回せるため、機材数を増やさずに運用したい現場では実質的に標準装備になります。

重量・電源・スタンド対応

12インチクラスは 10〜15kg、15インチクラスは 15〜20kg が一般的な重量帯です。1人で運搬する場合は12インチ以下、2人運搬なら15インチ以上が現実的な目安になります。スピーカースタンドへのマウント穴(35mm規格)の有無も、運用形態が決まったら必ず確認します。

電源は屋内ならコンセント1口で足りますが、屋外イベントは仮設電源・発電機の計画とセットで考えます。バッテリー駆動が必要な現場では、内蔵バッテリー型(Bose S1 Pro+/Roland CUBE Street EX/JBL EON ONE Compact)か、ポータブル電源(Jackery/EcoFlow など)の併用で対応するのが定石です。

まとめ|用途で選び抜く一台が、現場の機材構成を変える

パワードスピーカーは、可搬・小〜中規模PA・宅録モニター・路上ライブの大半をカバーする万能ジャンルではありますが、「どの現場で使うか」で必要なスペック軸が変わるのが本質です。

  • 小〜中規模PA:YAMAHA DBR/DXR・JBL EON700・Electro-Voice ZLX G2・QSC K.2 から、最大SPLと出力Wで選ぶ
  • 路上ライブ・移動拡声:Bose S1 Pro+・Roland CUBE Street EX・JBL EON ONE Compact から、バッテリー駆動時間と内蔵ミキサーで選ぶ
  • 宅録・スタジオモニター:YAMAHA HS5/HS8・KRK Rokit・iLoud Micro Monitor から、周波数特性のフラットさで選ぶ

スピーカー価格は変動が大きく、本記事執筆時点(2026年6月)と購入時点で実勢価格が変わります。本記事のスペック値は各社公式仕様書からの引用ですが、最新の価格・在庫はサウンドハウスなどの販売店および各メーカー公式サイトで必ず確認してください。

機材選定は「現場の条件を先に決めて、それに合うスペックを公式値で照合する」のが、買ってから後悔しないいちばんの近道です。Sound Picks 編集部としても、引き続きプロの現場で使われている機材を、嘘なくスペックベースで紹介していきます。

よくある質問(FAQ)

Q. パワードスピーカーとアクティブスピーカーは違うものですか?

基本的には同じものを指します。スピーカー本体にパワーアンプを内蔵したスピーカーのことを、業界では「パワードスピーカー」「アクティブスピーカー」と呼びます。海外メーカーは Powered/Active のいずれも併用しており、機能的な区別はありません。

Q. パワードとパッシブはどちらが音が良いですか?

音質はクラス(価格帯)とメーカーのチューニングで決まるため、パワード/パッシブの差で一概には言えません。ただしパワードはメーカー側でアンプとスピーカーのマッチングを最適化できるぶん、同価格帯であれば即戦力の音作りになりやすいのが実情です。大規模PAで複数本を1系統で鳴らす用途ではパッシブ+外部アンプが有利になります。

Q. ライブハウスでよく見るパワードスピーカーは何ですか?

小〜中規模のライブハウスやイベントでは、YAMAHA DBR/DXRシリーズ、Electro-Voice EKX/ZLX G2シリーズ、JBL EONシリーズ、QSC K.2シリーズがメインスピーカー/モニターの両方で広く採用されています。各社とも公式に最大SPL・出力W・周波数特性を公表しているので、現場の必要音圧に応じて比較できます。

Q. 路上ライブやストリート演奏に向くパワードスピーカーはありますか?

Bose S1 Pro+、Roland CUBE Street EX、JBL EON ONE Compactなど、内蔵バッテリーとマイク/楽器入力を備えた一体型パワードスピーカーが定番です。電源コンセントが取れない屋外でも数時間〜十数時間の連続使用ができ、ミキサーを別途持ち運ぶ必要がありません。

Q. 宅録のモニタースピーカーもパワードスピーカーですか?

はい。YAMAHA HS5/HS8、KRK Rokit、IK Multimedia iLoud Micro Monitorなどの宅録向けモニタースピーカーは、アンプとDSPを内蔵したパワードスピーカーです。ただしPA用と選定軸が異なり、最大音量よりも周波数特性のフラットさや位相の素直さが優先されます。

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